ドイツ 戦艦 の特徴
第一次大戦中に建造した、戦艦と巡洋戦艦を合計した数は26隻となっており、多数の戦艦を建造した戦艦大国であったことが伺えます。
ドイツの戦艦を一言で例えるなら、重防御です。傾向として砲の口径をあまり拡大させず、逆に装甲厚と水中防御力を充実させた点が目立ちます。
イギリスに触発されて早い時期から巡洋戦艦を建造するなど、いち早く対抗する工業力の高さはさすがドイツといったところです。
第一次大戦終結後は、敗戦国として自沈させた艦のほうが多いという結末に終わっています。このため、目立った近代化改装は施されていません。
ドイツ 戦艦 ナッソー級 Nassau Class
ドイツ海軍が建造した初の弩級戦艦。ドレッドノートの就役から3年後に就役した。速力を犠牲にした分主砲をドレッドノートより1基増し、分厚い装甲を施した艦として建造された。
全長はドレッドノートよりも15mほど短い小艦だった。
●攻撃力
採用された砲の口径は標準的な30.5cm砲ではない28.3cm砲だったものの、貫通力に優れ軽量というアドバンテージが持てたため採用された。
この砲を連装式に砲塔に収め、前後にバランスよく六角形に配置するレイアウトをとった。
この砲は発射角20°で18,900mの射程を持っていた。砲塔の数はドレッドノートより1基多かったが、片舷に向けられる砲門数は8門で同じだった。
副砲は船体側面の砲郭に14.9cm砲と、水雷艇への対策として8.8cm砲が装備された。
14.9cm砲は船体中央にまとめて、8.8cm砲は艦首と艦尾の砲郭と、前部と後部の艦橋側面に装備されていた。
45cm水中魚雷は、両舷に2組4基、艦首と艦尾に1基ずつの計6基が装備された。
●防御力
28.3cm砲を採用したことで30.5cm砲搭載艦よりも重量に余裕が生まれ、それは装甲に割り振られた。
舷側装甲は船体中央部の水線高さが300mmと最も厚い。また艦首側では90mm、艦尾側では80mmの厚さが施されていた。施された装甲の最大の部分は司令塔で、400mmもの厚みを持っていた。
甲板の装甲は中央防御区画の上甲板に17mmの装甲を張り、その下層には中央で55mm、両舷側で80mmの防御甲板が施されていた。
また防水区画の洗練や2層の水雷防御隔壁を盛り込んだ結果、ドレッドノートより全幅が2m近く大きくなった。
ほかに停泊中の魚雷攻撃を防ぐために魚雷防御網も装備していた。
●速力
本艦の出力機関はドレッドノートに装備されたタービンでなく、技術的な制約と経済的な点でレシプロ機関を採用した。
煙突は前部艦橋に埋め込まれるように1基、船体中央部に1基の2基が設置された。この配置はドイツの第一次大戦型戦艦のスタンダードとなった。
12基のボイラーは3つのボイラー室に収められ、4基の排煙は前部煙突、残りは後部煙突に排気された。ちなみに後部煙突横には特徴的なグースネッククレーンが装備されていた。
速力を犠牲にした設計が響き、ドレッドノートより遅い19.5ノットが精一杯の速力だった。
14.9cm45口径単装砲 12基
8.8cm45口径単装砲 6基
45cm水中魚雷発射管 6門
Armament: 6× twin 283mm/45caliber gun turret
12× 149mm/45caliber gun
6× 88mm/45caliber gun
6× 450mm torpedo
〇 装甲:舷側 300mm
甲板 80mm
司令塔 400mm
砲塔前面 280mm
Armor:belt 300mm
deck 80mm
conning tower 400mm
turret(front) 280mm
〇 排水量:18,570 t
Displacement
〇 全長:146.1 m
Length
〇 全幅:26.9 m
Beam
〇 機関: シュルツ・ソーニクロフト式石炭ボイラー ×12
レシプロ蒸気機関 3基3軸
Propulsion: 12× Boiler & 3× Reciprocating steam engine
〇 機関出力:22,000 hp
Power
〇 速力:19.5 ノット
Speed:19.5 Knots
〇 乗員数:1,008 名
Crew
ナッソー級 建造艦
■ ナッソー / Nassau:1909年10月就役。1920年4月日本に引渡しとされたがイギリスで解体。
■ ヴェストファーレン / Westfalen:1910年7月就役。1920年8月イギリスに引渡し後に解体。本艦には旗艦設備が設置されていた。
■ ラインラント / Rheinland:1910年4月就役。1920年6月に解体。
■ ポーゼン / Posen:1910年5月就役。1920年4月イギリスに引き渡し後に解体。
ドイツ 戦艦 ヘルゴラント級 HELGOLAND CLASS
Battleship Aerial Bombardment Demonstration Obsolete Ships
1920s Vintage Footage General Mitchell
©2015 HistoryFlicks4u
※ヘルゴラント級は4:30から
ナッソー級を改良した戦艦として2年後に建造された戦艦。特に火力を重点的に改良しており、30.5cm砲をドイツ戦艦で初めて搭載したクラスとなった。
小艦だった前級よりも全長で21m、幅で1.6m大きくなり、排水量は4,000t増加するなど標準的な大きさとなっている。この大型化は速力と防御力強化を狙い行われた。
敵から見て前後の判別を難しくさせるため、船体形状や艦橋、マストの高さを前後対称に見えるように工夫していた。
●攻撃力
主砲は28.3cm→30.5cmにサイズアップして打撃力を大幅に高めている。この砲は発射角13.5°で18,900mの射程を持っていたが、この数値はナッソー級と戦隊を組むために若干制限されたものだった。
砲の配置は前級と同じで艦の前後と中央部側面に六角に配置するレイアウトとした。しかし片舷に向けられる砲門数は8門で、前級よりも進歩がなかった。
前級と同じく副砲は14.9cm砲と、水雷艇対策の8.8cm砲だったが14.9cm砲は搭載数を2門増している。
水中魚雷発射管は45cm→50cmに強化されたものを装備した。
●防御力
装甲防御力は前級譲りで堅牢であり、要所の厚みは変わっていない。
●速力
本級では火薬庫の配置を見直してボイラー室を船体中央に集中配置した結果、船体中央に3本煙突という特徴的な配置となっている。
ボイラーは前級と同じく、石炭燃焼だが搭載数を3基増しの15基としたため速力が若干アップした。出力機関は前級と同じレシプロ機関としている。 〇 装甲:舷側 300mm 〇 排水量:22,440 t 〇 全長:167.2 m 〇 全幅:28.5 m 〇 機関: シュルツ・ソーニクロフト式石炭ボイラー ×15 〇 機関出力:28,000 hp 〇 速力:20.3 ノット 〇 乗員数:1,113 名
14.9cm45口径単装砲 14基
8.8cm45口径単装砲 14基
50cm水中魚雷発射管 6門
Armament:6× twin 305mm/50caliber gun turret
14× 149mm/45caliber gun
14× 88mm/45caliber gun
6× 500mm torpedo
甲板 80mm
司令塔 400mm
砲塔前面 300mm
バーベット 270mm
Armor:belt 300mm
deck 80mm
conning tower 400mm
turret(front) 300mm
barbets 270mm
Displacement
Length
Beam
レシプロ蒸気機関 3基3軸
Propulsion: 15× Boiler & 3× Reciprocating steam engine
Power
Speed:20.3 Knots
Crew
近代化改装
■攻撃力の増加
●主砲の発射角制限を解除して16度としたことで射程を20,400mに延長した。
■機関の改良
●石炭ボイラーに重油燃焼機能を付加して石炭重油混焼ボイラーに改良した。
ヘルゴラント級 建造艦
■ ヘルゴラント / Helgoland:1911年8月就役。1920年8月イギリスに引渡し後に解体。
■ オストフリースラント / Ostfriesland:1911年8月就役。1919年4月アメリカに引渡し。1927年航空機の爆撃標的として沈没。本艦には旗艦設備が設置されていた。
■ チューリンゲン / Thüringen:1911年7月就役。1920年4月フランスに引渡し後に解体。
■ オルデンブルク / Oldenburg:1912年5月就役。1920年5月日本に引渡し後に解体。
ドイツ 戦艦 カイザー級 KAISER CLASS
新しい砲塔配置の導入と、巡洋戦艦以外でのタービン採用といった新機軸を盛り込んだクラス。
長船首楼船体の採用によって、艦首から後部艦橋まで一段高い甲板を持っていた。
●攻撃力
ヘルゴランド級から引き続き、主砲には30.5cm連装砲を採用している。イギリス海軍で就役していたネプチューン級の楔形砲塔配置を参考にしている。船体中央部の砲塔をすべての砲門を向けることが可能になった。
主砲以外の兵装は前級と同じく、副砲は14.9cm砲と、8.8cm砲の組み合わせであり、500mm水中魚雷発射管も搭載した。
●防御力
今までのクラスと違い、主砲塔が1基減ったことで重量が浮いており、それを装甲にまわしたためより一層重防御となっている。
舷側装甲は50mm増厚となって350mmとなっているほか、船体幅を増加させて水中防御をより充実させている。
●速力
本艦は、初めからタービンによって推進力を得るドイツ艦として建造されている。またボイラーも石炭と重油を併用する混焼ボイラーを標準装備としている。
機関出力はヘルゴラント級から1割増しの31,000馬力となり、速度も上昇。標準的な速さである21ノットを発揮することができた。
煙突は間隔をあけて2基設置され、その間に大砲を挟んだドイツ艦のスタンダードに戻った。 〇 装甲:舷側 350mm Armor:belt 350mm 〇 排水量:24,330 t 〇 全長:172.4 m 〇 全幅:29.0 m 〇 機関: シュルツ・ソーニクロフト式混焼ボイラー ×16 〇 機関出力:31,000 hp 〇 速力:21 ノット 〇 乗員数:1,084 名
14.9cm45口径単装砲 14基
8.8cm45口径単装砲 8基
50cm水中魚雷発射管 5門
Armament:5× twin 305mm/50caliber gun turret
14× 149mm/45caliber gun
8× 88mm gun
5× 500mm torpedo
甲板 100mm
司令塔 400mm
砲塔前面 300mm
バーベット 300mm
deck 100mm
conning tower 400mm
turret(front) 300mm
barbets 300mm
Displacement
Length
Beam
蒸気タービン 3基3軸
Propulsion: 16× Boiler & 3× Steam turbine
Power
Speed:21 Knots
Crew
カイザー級 建造艦
■ カイザー / Kaiser:1912年8月に就役。1919年6月自沈。1929年引き揚げ後に解体。
■ フリードリッヒ・デア・グローゼ / Friedrich der Grosse:1912年10月就役。1919年6月自沈。1929年引き揚げ後に解体。艦隊旗艦として機能するための施設が置かれていた。
■ カイゼリン / Kaiserin:1912年8月就役。1919年6月自沈。1937年引き揚げ後に解体。
■ プリンツレゲント・ルイトポルト / Prinzregent Luitpold:1913年9月就役。1919年6月自沈。1931年引き揚げ後に解体。中央部分の推進機関をディーゼル機関とするためのテストベッドとして計画されていたが、中止となり中央推進軸のない若干低速の艦だった。
■ ケーニッヒ・アルベルト / Konig Albelt:1913年7月に就役。1919年6月自沈。1935年引き揚げ後に解体。
ドイツ 戦艦 ケーニッヒ級 KÖNIG CLASS
本クラスはドイツ海軍最後の弩級戦艦として建造された。
カイザー級の改良型として建造されたクラス。砲塔配置や新兵器である高角砲の装備という点に特徴があった。
●攻撃力
主砲に弩級艦の標準装備ともいえる30.5cm連装砲を装備したが、今までの艦と異なり主砲をすべて一直線上に配置していた。
副砲は14.9cm単装砲を船首楼甲板の砲郭に14基装備した。このうち前方用は10基、後方用は4基だった。また更に小口径砲として8.8cm単装砲を6基前部艦橋構造物側面に装備した。
新兵器の高角砲は8.8cm単装高角砲を採用。2基を後部煙突側面に装備した。
魚雷は500mm水中魚雷発射管5門を装備。1門が艦首に装備され。ほかは両舷側に割り振られた。
●防御力
舷側装甲にはカイザー級と同じ350mmの厚みが施された。艦全体にこの装甲があったが、艦首では150mm、艦尾では120mmと薄かった。
また副砲がある砲郭には180mmの装甲が張られていた。
装甲甲板は3層で、上甲板に30mm、中甲板で20mm、下甲板は最も厚い舷側部分で100mm、船体中央は60mmの厚みになっていた。
水中防御も改良され、全長の9割近くを二重底にするなど被害を抑える工夫が行われた。
これらの防御に割いた排水量は全体の4割とされており、ドイツ戦艦の防御力の充実ぶりがわかる。
●速力
ボイラー室は2区画に分けられ、前部で9基、後部で6基と振り分けた。そのため前部煙突が太くなり、主砲1基をはさんだため従来のドイツ戦艦より煙突の間隔が狭くなっている。
本クラスでは、設計時からディーゼル機関による推進を行うように建造が進んでいたが、満足な推進力が得られないとして断念している。 出力は31,000馬力で速力21ノットと前級と変わっていない。
14.9cm45口径単装砲 14基
8.8cm45口径単装砲 6基
8.8cm45口径単装高角砲 2基
50cm水中魚雷発射管 5門
Armament:5× twin 305mm/50caliber gun turret
14× 149mm/45caliber gun
6× 88mm/45caliber gun
2× 88mm/45caliber anti air gun
5× 500mm torpedo
〇 装甲:舷側 350mm
甲板 100mm
司令塔 300mm
砲塔前面 300mm
バーベット 300mm
Armor:belt 350mm
deck 100mm
conning tower 300mm
turret(front) 300mm
barbets 300mm
〇 排水量:25,390 t
Displacement
〇 全長:174.5 m
Length
〇 全幅:29.5 m
Beam
〇 機関: シュルツ・ソーニクロフト式重油ボイラー ×3
シュルツ・ソーニクロフト式混焼ボイラー ×12
パーソンズ式蒸気タービン 3基3軸
Propulsion: 15× Boiler & 3× Steam turbine
〇 機関出力:31,000 hp
Power
〇 速力:21 ノット
Speed:21 Knots
〇 乗員数:1,136 名
Crew
ケーニッヒ級 建造艦
■ ケーニッヒ / König:1914年8月就役。1919年6月自沈。1962年引き揚げ後に解体。前部煙突に艦隊司令設備を設けていた。
■ グローサー・クルフュルスト / Grosser Kurfüst:1944年7月就役。1919年6月自沈。1936年引き揚げ後に解体。
■ マルクグラーフ / Markgraf:1914年10月就役。1919年6月自沈。1962年解体。
■ クロンプリンツ / Kronprinz:1914年11月就役。1919年6月自沈。1937年引き揚げ後に解体。
ドイツ 戦艦 (巡洋戦艦) フォン・デア・タン VON DER TANN
Navy Story – Von Der Tann (1914-1918)
©2014 British Pathé
イギリスが、戦艦と同様の攻撃力を持ちながら速度に優れる「高速戦艦」と呼ばれる艦を開発したことで、ドイツ海軍も同様の艦種を建造する必要に迫られた。
ドイツ海軍初の巡洋戦艦である本級は、速力でやや劣ったもののイギリスより充実した防御性能を持つ。
速力を出すために多数のボイラーを搭載、数年後に開発されるデアフリンガー級の機関出力に迫った。
また通常の重装甲・高火力の戦艦とは違って、はじめからタービンを標準装備したり、3軸推進でなく4軸推進であることなど、巡洋戦艦としての性格の違いが顕著に現れている。
デザインを流用したのか定かではないが、シルエットはナッソー級によく似ている。
●攻撃力
1910年当時、すでに就役していたナッソー級戦艦と同じ主砲である28.3cm砲を採用している。この連装砲塔4基を艦首、両舷、艦尾に配置した。両舷は楔配置となっている。
副砲は14.9cm砲と8.8cm砲を採用。前者は船体中央側面の砲郭、後者は船首側面、前部艦橋側面、後部艦橋上、艦尾にそれぞれ2基ずつ装備していた。
魚雷発射管は450mmのものを4門装備していた。
●防御力
舷側は船体中央部の水線高さの舷側装甲が250mmの厚さを持っていた。司令塔にも同じ厚みが施され、主砲前面やバーベットも厚い装甲を持っていた。
これらの厚みは同時期のイギリス巡洋戦艦と比べると大きく上回っていた。
●速力
ボイラー数はナッソー級戦艦が12基だったのに対し、18基ものボイラーを搭載することで43,000馬力を発生して2組4軸推進とした。
速力は24.8ノットで巡洋戦艦としてはやや物足りないものの、それは実戦では問題にならなかったことを証明している。
煙突の配置は前部艦橋直後に1基と、船体中央に1基であり、ナッソー級と同じものだった。
14.9cm45口径単装砲 10基
8.8cm45口径単装砲 16基
45cm水中魚雷発射管 4門 Armament:5× twin 283mm/45caliber gun turret
10× 149mm/45caliber gun
16× 88mm/45caliber gun
4× 450mm torpedo
〇 装甲:舷側 250mm
甲板50mm
司令塔 250mm
砲塔前面 230mm
バーベット 230mm
Armor:belt 250mm
deck 50mm
conning tower 250mm
turret(front) 230mm
barbets 230mm
〇 排水量:19,064 t
Displacement
〇 全長:171.7 m
Length
〇 全幅:26.6 m
Beam
〇 機関: シュルツ・ソーニクロフト式石炭ボイラー ×18
パーソンズ式蒸気タービン 4軸
Propulsion: 18× Boiler & 4× Parsons steam turbine
〇 機関出力:43,600 hp
Power
〇 速力:24.8 ノット
Speed:24.8 Knots
〇 乗員数:923 名
Crew
フォン・デア・タン 経歴
1910年9月就役。1919年6月に自沈。
ドイツ 戦艦 (巡洋戦艦) モルトケ級 MOLTKE CLASS
フォン・デア・タン就役の1年後に登場した改良型。
次々に建造されるイギリスの巡洋戦艦に対応するため、主砲塔を前級より1基増しで火力を増強している。
前級の船首楼甲板は後部砲塔まで延長されて長船首楼甲板となったほか、船幅は3mも大きくなっている。
●攻撃力
前級と同じ28.3cm連装砲を搭載したが、45口径→50口径の長砲身型とし、1基増しの5基とした。
増加した砲塔は艦尾に割り振られ、背負い式に配置されている。砲は発射角13.5度で18,100mの射程を持っていた。
また船体中央部の砲は煙突をはさんだ楔配置を引き継いだため、片舷に10門の砲を向けることができた。
副砲は前級と同じ14.9cm砲と8.8cm砲で、装備数が異なるものの配置場所は同じだった。
魚雷発射管は45cm→50cmと強化され、これを4門装備した。
●防御力
堅牢だった装甲はさらに強化され、舷側は船体中央部の水線高さの舷側装甲が270mmだった。
特に艦橋は耐弾性重視であり、司令塔の装甲厚は巡洋戦艦でありながら350mmと極めて厚かった。
また水中防御として、隔壁の増加と水密区画の洗練も行われた。
●速力
ボイラー数は前級の18基を大きく上回る24基を詰め込み、52,000馬力を出力。前級より1万馬力近く強化された。
馬力強化により試験時の最大速力は28.4ノットを発揮したが、実用的な速力は25.5ノットとなった。
幅広の船体に無理やり速度を出させようとした結果、配置場所が異なる舵が2軸ずつに用意されるタンデム舵となっており、これによる操舵能力の悪さが弱点となっている。
なおこの配置はしばらく改善されず次級にも引き継がれることになる。
煙突は配置こそ前級と同じだったが、煙突径はボイラー数の関係上一回り大きいものが設置されていた。
14.9cm45口径単装砲 12基
8.8cm45口径単装砲 12基
50cm水中魚雷発射管 4門 Armament:5× twin 283mm/50caliber gun turret
12× 149mm/45caliber gun
12× 88mm/45caliber gun
4× 500mm torpedo
〇 装甲:舷側 270mm
甲板 50mm
司令塔 350mm
砲塔前面 230mm
バーベット 230mm
Armor:belt 270mm
deck 50mm
conning tower 350mm
turret(front) 230mm
barbets 230mm
〇 排水量:22,616 t
Displacement
〇 全長:186.5 m
Length
〇 全幅:29.5 m
Beam
〇 機関: シュルツ・ソーニクロフト式石炭ボイラー ×24
パーソンズ式蒸気タービン 4軸
Propulsion: 24× Boiler & 4× Parsons steam turbine
〇 機関出力:52,000 hp
Power
〇 速力:25.5 ノット
Speed:25.5 Knots
〇 乗員数:1,053 名
Crew
近代化改装
■攻撃力の増加
●主砲発射角を16度に増加し、射程を18,100m→19,100mに延長した。
●8.8cm砲と魚雷防御網を撤去。変わりに高角砲を搭載した。
●前楼に着弾観測点を追加。
モルトケ級 建造艦
■ モルトケ / Moltke:1911年9月竣工。1919年6月に自沈。
■ ゲーベン / Goeben:1912年7月竣工。第一次大戦中アドリア海で本国帰還をあきらめ、トルコに逃亡。そのままトルコ戦艦「ヤウズ・スルタン・セリム」となった。
ドイツ 戦艦 (巡洋戦艦) ザイドリッツ SEYDLITZ
モルトケ級の改良艦として、モルトケ就役の2年後に登場した。全長はさらに大型になっており。ドイツ戦艦ではじめて200mを超えた。
攻撃力はそのままだったが防御力を増しつつ速度の向上を果たしている。
艦首から段差のついた甲板が3層あり、それぞれの段に艦首砲塔、船体中央部砲塔、艦尾砲塔が配置されていた。
このクラスは1隻のみが建造された。
●攻撃力
前級と同じく主砲は28.3cm50口径連装砲で、配置も同じだった。
副砲も前級の14.9cm、8.8cmの組み合わせで配置も変わっていない。
魚雷も50cm魚雷発射管4門と、兵装だけ見れば変化は見られない。
●防御力
舷側は300mmの装甲厚となり、各国の通常型戦艦とほぼ同じ厚みに引き上げられた。司令塔は350mm→300mmとモルトケ級ほどではなかったが、依然厚かった。
装甲の厚みや配置の工夫だけでなく、防火・消化装置や注排水装置といったダメージコントロールも装備され優れた防御力を誇っていた。
ジュットランド海戦では相手戦艦を撃沈しながらも撃沈ぎりぎりまで追い詰められた。しかし持ちこたえ、攻撃を受けても沈まないドイツ戦艦のイメージは高まっていった。これらの防御力にかかわらず、船幅はモルトケ級よりも若干減少していた。
●速力
ボイラーは石炭ボイラーをモルトケより3基増しの27基の搭載とした。ボイラー数だけを見ればドイツ戦艦としては史上最多の搭載数である。
出力は6,3000馬力を生み出しこの艦に26.5ノットの速力を与えた。
しかし、前級から変わらず段差のある舵配置を採用したため操舵性の悪い艦となっている。
煙突配置は変わっていない。
14.9cm45口径単装砲 12基
8.8cm45口径単装砲 12基
50cm水中魚雷発射管 4門 Armament:5× twin 283mm/45caliber gun turret
12× 149mm/45caliber gun
12× 88mm/45caliber gun
4× 500mm torpedo
〇 装甲:舷側 300mm
甲板 80mm
司令塔 300mm
砲塔前面 250mm
バーベット 230mm
Armor:belt 300mm
deck 80mm
conning tower 300mm
turret(front) 250mm
barbets 230mm
〇 排水量:24,594 t
Displacement
〇 全長:200.5 m
Length
〇 全幅:28.5 m
Beam
〇 機関: シュルツ・ソーニクロフト式石炭ボイラー ×27
パーソンズ式蒸気タービン 4軸
Propulsion: 27× Boiler & 4× Parsons steam turbine
〇 機関出力:63,000 hp
Power
〇 速力:26.5 ノット
Speed:26.5 Knots
〇 乗員数:1,068 名
Crew
近代化改装
ほかの巡洋戦艦と同じく、主砲の射程延長、高角砲の搭載と8.8cm砲・魚雷防御網の撤去、前楼に着弾観測所を追加するなどの改装が行われている。
ザイドリッツ 経歴
1913年5月就役。1919年6月に自沈。
ドイツ 戦艦 (巡洋戦艦) デアフリンガー級 DERFFLINGER CLASS
サイドリッツを改良したクラス。ドイツの第一次大戦型巡洋戦艦としては最後のクラス。
前級に攻撃力の変化がなかったのに対し、本級では攻撃力が向上している。砲配置も船体中央の配置をやめて、船首と船尾に配置するレイアウトとなり近代的な印象を受ける。
甲板は船体中央部の甲板のみが一層高くなった平甲板型船体を採用した。
210mに達する全長を持ち、ドイツ海軍の巨人にふさわしい艦容を誇っていた。
●攻撃力
弩級戦艦と同じ30.5cm砲を採用。この連装砲塔を艦首と艦尾に背負い式に搭載しており、弩級戦艦からの脱皮が始まりつつあった部分を見ることができる。
副砲は14.9cmと8.8cmの組み合わせである。14.9cm砲は今まで通り船体中央部側面の砲郭に装備された。8.8cm砲は1番艦のみが装備したが、やがて高角砲も追加されるようになった。
魚雷は50cm水中魚雷発射管4門だったが、2番艦と3番艦は60cmに強化されたものを装備した。
●防御力
重防御だった前級をさらに超えた装甲を備え、舷側船体中央部は300mm、司令塔には350mmの厚みがあった。ほかの重要部位の装甲も厚みが増している。
水中防御も前級より改良が施され、生存性が高められた。
●速力
新しいボイラー形式である、重油を専用で燃焼するものを4基装備している。ただ、主力はまだ石炭燃焼式で、それを14基の合計18基を装備した。
出力は6,3000馬力で、出力だけ見ればサイドリッツと同じスペックだった。これらの出力により26.5ノットの速力を得た。
舵が利きにくい段差式舵配置は最後まで改善されることはついになく、このクラスでも引き継がれてしまった。
煙突配置は今までの巡洋戦艦の配置を後方にずらしたものになり、前部艦橋も含めた煙突が船体中心に位置している。
なお煙突の間には不自然な隙間が存在している。砲塔の増備が計画されていたのか、配置を途中で取りやめたのかは不明。
14.9cm45口径単装砲 12基
8.8cm45口径単装砲 4基
50cm水中魚雷発射管 4門 Armament:4× twin 305mm/50caliber gun turret
12× 149mm/45caliber gun
4× 88mm/45caliber gun
4× 500mm torpedo
〇 装甲:舷側 300mm
甲板 50mm
司令塔 350mm
砲塔前面 270mm
バーベット 260mm
Armor:belt 300mm
deck 50mm
conning tower 350mm
turret(front) 270mm
barbets 260mm
〇 排水量:26,180 t
Displacement
〇 全長:210.4 m
Length
〇 全幅:29.0 m
Beam
〇 機関: シュルツ・ソーニクロフト式重油ボイラー ×4
シュルツ・ソーニクロフト式石炭ボイラー ×14
パーソンズ式蒸気タービン 4軸
Propulsion: 18× Boiler & 4× Parsons steam turbine
〇 機関出力:63,000 hp
Power
〇 速力:26.5 ノット
Speed:26.5 Knots
〇 乗員数:1,112 名
Crew
近代化改装
ドイツ海軍で施されていた巡洋戦艦への改装として、主砲の射程延長、高角砲の搭載と8.8cm砲・魚雷防御網の撤去、前楼に着弾観測所を追加するなどの改装が行われている。
デアフリンガー級 建造艦
■ デアフリンガー / Derfflinger:1914年9月に就役し、1919年6月に自沈。1939年引き揚げ後に解体。
■ リュッツオウ / Lutzow:1915年8月就役。1916年6月、ジュットランド海戦で致命傷を負い、味方駆逐艦により雷撃処分された。
■ ヒンデンブルグ / Hindenburg:1917年5月就役。今までのドイツ戦艦の改正点を含んで建造。魚雷の強化や高角砲の装備など、1番艦より火力を充実させていた。1919年6月に自沈。1930年引き揚げ後に解体。
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