ただ山道を進むだけのシンプルなゲーム ” ゲッティングオーヴァーイット Getting Over It With Bennett Foddy “。半身裸で半身は壺の男が登山用ハンマーを振り回しながら少しずつ進む。やばい。
このゲームは今までの積み重ねを維持するのも難しく、一歩前進百歩後退ということが当たり前のように起こる。そしてあなたは幾度も打ちのめされるだろう。
しかしあきらめないでほしい。何故なら彼をこの世界の頂に導けるのは、鋼のような忍耐力を持ったプレイヤーであるあなただけなのだから。
ゲッティングオーヴァーイット ってどんなゲーム
ダイナミック壺転落シミュレーターといったところです。
あなたは” 壺おじさん “となり、ハンマーを振り回して引っ掛けながら上を目指します。
操作方法はとてもシンプルですが、道のりは長くて非常に険しく巧みな操作が要求されます。
やっとの事で上がった道のりが、落下する時は一瞬で落ちてしまうため何よりも失敗しても屈しない強い心が要求されます。
本ゲームのプロモーションムービーでは誰かを傷つけるために作ったゲームと公言されており、人々を悪夢の世界に引きずりこむ目的で設計されています。
ちなみに「人を傷つけるための道具」の意味を持つ言葉は、凶器です。とんでもない時代に突入したようですね。
ゲッティングオーヴァーイット 登場人物
主人公( 壷おじさん )
本名はディオゲネスという古代の哲学者の名前を持ったおじさんで、鍛え込んだ肉体が自慢。
何故か壷に下半身がはまっており、上半身は裸である。見た目だけですでにヤバイが移動方法もやばく、ハンマーを器用に扱って素早く移動を行う。
凄まじい腕力を持ち、腕の力だけで数メートルの跳躍を行い、行き先の正面を見ずに横を向きながら移動する能力者。人間軽く超してる。
壺おじさんの体力は無限であり、プレイヤーの忍耐力が擦り切れるまでハンマーをぶん回せる。
「うぬっ!」、「くっ!」 という彼のうなり声を聞きながら忍耐を学ぶのがこのゲームの醍醐味。
壺の中にはなんらかの液体が入っていると言われるているが、彼の汗です。
そんな彼も落下する時は落ち込むらしく、「Ahhh・・・no.」や「Oh・・・.」と低めのトーンで声を出す。そんなに辛いなら壷から出て普通に登れよ!
ナレーション
ただでさえ超難易度のこのゲームに余計な調味料を加えてくるプレーヤーの敵。
激励することもなく、「まあ頑張れば?」という感じに感情のこもっていない台詞を呟く。
落下するごとに偉人達のありがたいお言葉を聞かせてくれる。
聴かせてくる音楽のセンスもひどい。
壺おじさん 登り方のいろいろ
●スイングジャンプ
” 壺おじさん “の基本動作で、ハンマーをあらゆる物体に引っ掛けた状態で振り回すことで上方向に移動することができる。回す速度によって勢いを調整できる。
●ジャンプ
壺おじさんの基本動作で、カーソルを壺の下に勢いをつけて持っていくことで垂直ジャンプすることができる。
斜め入力では斜め方向にジャンプする。足場の角度によっても変化しやすい。
体が若干浮いた状態でもジャンプ可能だが、あまり浮きすぎるとジャンプできない。
●微調整
ジャンプの要領と同じだが、ゆっくりとハンマーの先を動かすことで、ハンマーを支点にして体を持ち上げることができる。これを左右に傾ける事で、ゆっくりと位置を調整することができる。
また、何も無い斜め上のにカーソルを持っていってハンマーを振ると、重心が動いておじさんを微妙に動かすこともできる。
●スーパージャンプハンマーの引っ掛かり、回転の勢いのいずれもが良い場合、通常よりも高さのあるスーパージャンプとなる。狙って出すのは難しいが、出せるようになればショートカットできる場所が増える。
●引っ掛け登り引っかかったハンマーが壺おじさんより上にある状態でゆっくりと引き寄せようとすると、おじさんの腕が曲がる。この状態で素早くハンマーの先を斜め上にすると、今引っ掛かっている場所よりも奥のほうにハンマーが引っかかる。
跳んだ先のハンマーの引っ掛かり場所が悪い場合にも使える。
ナレーションの攻撃
ナレーションは余計な一言と、余計な偉人の格言の2つの攻撃パターンを持っています。
プレイヤーのあなたは落下するたびに受ける攻撃を跳ね返し、壺おじさんをもう一度上に登らさなければなりません。
余計な一言
呟き | プレイヤー ダメージ |
やり直しは、やり始めるよりも・・・辛い。 | ★☆☆☆☆ |
いつでもどうぞ、私はここで待っていますから。 | ★☆☆☆☆ |
あ、また。諦めないで。己を強く持って。 | ★★☆☆☆ |
お、大きく後退することに。相当なイライラですね。 何とも悔しい。 |
★★★☆☆ |
私は、あなたの夢を破壊し、希望を粉砕する。 | ★★★★☆ |
ええと、あなたのありのままを、そのままどうぞ。 | ★★★★★ |
く~お悔やみ申し上げます。 | ★★★★★★★★ |
壺おじさん と学ぶ余計な偉人の格言
しかし一度立ち止まってよく見てみると、素晴らしい事が書かれています。そんなものを人を傷つける要素の一つにしてしまうとは・・・。このゲーム流石です。
「私達が失敗と呼ぶものは、落ちる事ではなく、落ちたままでいるということだ。」
– メリー・ピックフォード –
メリー(メアリー)・ピックフォードは1910~30年代に活躍したアメリカの女優です。1929年の映画「コケット」でアカデミー主演女優賞を獲得し、”アメリカの恋人”という呼び名で親しまれました。
とにかく前に進もうという気概が感じられる格言ですね。
「今ここにある痛みは、過去の幸せだ。物事はそうやって動いている。」
– C・S・ルイス –
あのナルニア国物語の原作者です。敬虔なクリスチャンでもあり、宗教に関する書籍や格言も数多く残しています。
「地球で最も大きな幸福を自らの内に感じる。静寂と沈黙の良心。」
「甘き静寂が思考されるその瞬間に、わたしは、過去の出来事を自らの中に呼び起こす。
求めたものの多くを手にしていないことを嘆き、古き悲哀と共に、愛しき時間の浪費に新たな泣き声を上げる。」
「疑念は裏切り者であり、これのせいで挑戦する事をおそれ、勝ち取ることのできたはずの成果を失ってしまう。」– ウイリアム・シェイクスピア –
16世紀のイギリスで活躍した劇作家として超有名な人ですね。一説では腐った魚を食べて病気になって死んだとされています。悲劇が得意な作家だけに笑えません。
「今より良くなるとは信じられないだろう。しかし、それは間違いだ。
必ず幸せになる時が訪れる。これを知り、本気で信じる事で、今の惨めな気持ちを和らげられる。」
– エイブラハム・リンカーン –
16代合衆国大統領。 南北戦争では北軍(合衆国)の指揮も務め、南軍(連合国)を下しました。「人民の、人民による、人民のための統治」として知られるゲティスバーグ演説の他、女の子に「ひげがあるほうがカッコいい。」と言われて髭を蓄えて選挙に臨んだ話は有名ですね。
「私のお墓で泣かないで下さい。そこに私はいません、死んでいないのです。」
– メリー・フライ –
「千の風」として翻訳され、歌にもなったあの格言です。アメリカ人女性のメリー(メアリー)・フライが作詞したものとされています。
「生きるのは、苦しむこと。生き延びるのは、苦しみの中に意味を見出すこと。」
– フリードリッヒ・ニーチェ –
19世紀に活躍したドイツ人哲学者。著書である「ツァラトゥストラはかく語りき」は、作曲家のシュトラウスによって壮大な交響曲として作曲されます。(“2001年宇宙の旅”のあの曲)
「人生は喜びと苦しみのタイルである。悲しみは2つの喜びの間にある小休止。
平和は2つの戦争の間にある幕間である。棘の無いバラはない。勤勉な労働者は、棘を避け、花を摘む。」
– サティヤ・サイ・ババ –
インドの霊能力者。この人は奇跡を起こす男として日本でも紹介される程人気がありました。他にもインド国内の病院・学校・インフラ設備を無償提供するなどの功績により、死後もインド国内で讃える声は多いです。
「悲しみは私の庭だ。そこで新たな草が芽吹き、冷たい火と共に、かつて繁く燃え盛っていたかのように輝きを放ち、今年、私の周りに寄り集まる。」
– ウィリアム・カルロス・ウィリアムズ –
20世紀中期のアメリカの詩人。アメリカのナショナルブックアワードの詩部門の最初の受賞者として有名です。
「あらゆる言葉の中で最も悲しいのは、”もし、あの時”。」
– ジョン・グリーンリーフ・ホイッティア –
19世紀の詩人で、黒人奴隷廃止運動者としても活躍。ニューイングランドの農村生活を詠った「雪に閉ざされて」が有名です。
「結局のところ、人は、しなかったことを悔やむ。」
– ルイス・キャロル –
「不思議の国のアリス」の作者として有名なイギリス人作家。作家としての顔の他、数学者としても活躍していた学者肌の方です。
「妄信的に好みを受け入れて、観客を喜ばせるのは彼らに対する尊敬がない事を意味する。」
– アンドレイ・タルコフスキー –
ソ連の映画監督の格言。作品では「ノスタルジア」や「惑星ソラリス」が特に有名。
「彼女は揺るぎ無い瞳で、敗北の中で微笑んだ。」
– アッティクス –
フルネームはティトゥス・ポンポニウス・アッティクス。古代ローマの名家に生まれた知識・文化人で、私財を使ってアテナイ(アテネ)の文芸業界を支えました。
「笑えば、世界も笑う。泣けば、ひとりぼっち。
悲しき地は歓喜を他から借りる。だがそれ自身には問題が付きまとう。」
– エラ・ウィーバー・ウィルコックス –
アメリカの女性詩人でちょっぴりオカルトな人。格言は、彼女の有名な詩である「孤独」の一節から。
「ただ忘れて微笑むこと、覚えて悲しむより、そっちのほうがいい。」
– クリスティーナ・ロゼッティ –
19世紀のイギリスの女性詩人であり人道主義者。文化人の家柄であり、特に有名な人物は、「受胎告知」などで知られる画家の兄ダンテ。
「打ち寄せる波に虐げられる海岸の中に、佇む。
握った拳の中にあるのは、黄金の砂の粒子。何と少ないことか!それに、指の間を抜ける感触。
目からは涙が溢れ、こぼれ落ちる!神よ!強く握り、これを手にとどめることはできないのか?
神よ!無慈悲な波からこれを守ることはできないのか?
この世は・・・眼に映る全ては、夢の中の夢なのか?」
– エドガー・アラン・ポー –
19世紀のアメリカの小説家で、推理小説の草分けとして以降の文化人達に大きな影響を与えた人物として世界的に有名。
「誰かの悲哀を目にしながら、悲しみにくれないことなどあるのか?
誰かの悲痛を目にしながら、柔らかなる癒しを求めないことなどあるのか?」
– ウィリアム・ブレイク –
18世紀に活躍したイギリスの詩人。もともとは画家として活躍していました。彼の預言詩である「ミルトン」の序詩は、イギリスの催し物で必ず演奏される「エルサレム」の歌詞となっています。
「果物の核果でさえ割れ、その中身は太陽のもとで耐え忍び、身を以って痛みを知る。
日々の奇跡に心震わすことができれば、その痛みは、月並みだとは言い難くなる。」
– ハリール・ジブラーン –
20世紀に活躍したレバノン出身の詩人。宗教的で壮大な詩を残し、ウィリアムブレイクと比較される人物です。
「これこそが忘れることのない、長きに渡り続いてきた消沈の時。
凍えるものが雪を記憶するようにまず寒気、次に昏睡、そして解き放たれる。」「痛みには空白が伴う。
それが始まった時を想起することはできず、それが存在しなかった日々を思い返すこともできない。
それがあるのみで、未来は介在しない。
その無限の領域に過去があり、新たな痛みの日々の知覚を教化するのみ。」
– エミリー・ディキンソン –
19世紀のアメリカの女性詩人。裕福な名家の出身で、すぐこの人の作品だと分かる程特徴が多い詩を創るとされています。彼女の評価は死後段々と大きくなり、現在その評価は世界的に揺ぎ無いものとなっています。
「堪忍は無事長久の元、怒りは敵と思え。
勝つことばかり知りて、負くること知らざれば、害その身に至る。」
– 徳川家康 –
日本史でおなじみの1603年から260年余り続いた江戸幕府の初代将軍。ホトトギスの句にも表された、耐え忍んで機を待つ性格を良く表した格言。
壺おじさん の魅力
このゲームは操作性の難しさと説明の少なさ、ナレーターの攻撃力の高さによって超難易度ゲームとして有名です。
しかし、時間を掛けてプレイするほど攻略方法も分かり、一段上に上がるだけでも苦労していたものが直ぐ上に上がれるようになります。
だから、いつの日かは壺おじさんを世界の頂上に導くことができるはずです。 開発者も、今のゲームでは忘れ去られた理不尽な仕様を味わって、苦労の果てに達成感を得てほしいと述べています。
もしかしたら、壺おじさんの屈強な姿はプレイヤーの鋼の精神の化身なのかもしれませんね。
コメント