第一次大戦時は標準的な弩級戦艦を保有していましたが、1920年代末に登場したネルソン級の影響を受けて、第二次大戦時は集中防御と前方火力に重きを置いたデザインとなり、4連装砲塔2基を船体前面に、副砲群を船体後方に集中配備する戦艦を建造しました。
リシュリュー級建造時には、本国がドイツ侵攻によって降伏したため建造途中で本国を離れ、その際に連合軍側から攻撃を受けました。戦争末期には連合軍側に編入されて敵国に占領された祖国の施設を攻撃するという数奇な運命に弄ばれています。
フランス 戦艦 クールベ 級 CURBET CLASS
フランス海軍が建造した初の弩級戦艦。主砲として30.5cm砲を6基搭載していた。配置は背負い式に前部艦橋前に2基、後部艦橋後ろに2基、船体中央部の両舷に2基で、全12門の主砲の内8門を前後方向に向けることができた。
この主砲は、最大発射角12度で13,500mの射程を持っていた。
副砲として13.9cm砲が22門搭載され、両舷の第一甲板砲郭に各9門、第二甲板砲郭に各2門配置された。
煙突は前部艦橋に組み込まれるように2本、その後ろにマストをまたいで全部で3本装備された。 〇 装甲:舷側 270mm 〇 排水量:22,189 t 〇 全長:166 m 〇 全幅:27.0 m 〇 機関: ベルヴィール式混焼ボイラー ×24、パーソンズ式蒸気タービン 4軸 〇 機関出力:28,000 hp 〇 速力:20 ノット 〇 乗員数:1,100 名
13.9cm55口径単装砲 22基
47mm単装砲 4基
45cm水中魚雷発射管 4門
Armament:6× 305mm/45caliber twin gun turret
22× 139mm/55caliber gun
4× 47mm gun
4× 450mm torpedo
甲板 70mm
司令塔 300mm
砲塔前面 320mm
バーベット 300mm
Armor:belt 270mm
deck 70mm
conning tower 300mm
turret(front) 320mm
barbets 320mm
Displacement
Length
Beam
Propulsion: 24× Boiler & Parsons Steam Turbine
Power
Speed:20 Knots
Crew
近代化改装
●主砲の発射角を23度に改め、射程を26,300mに延長した。また7.5cm単装高角砲を追加装備し、対空能力を強化した。
●改良された方位盤と測距儀を備えた前部艦橋は、後方に三脚マストが設置されたものになった。
●ボイラーは焼式から重油専用ボイラーに切り替えが行われ、煙突も3本から径の太い2本に変更された。
クールベ 級 建造艦
■ クールベ / Courbet:1913年11月就役。1944年に防波堤となった。
■ フランス / France:1914年8月就役。1922年に暗礁に乗り上げ、沈没。
■ シャンバール / Jean Bart:1913年6月就役。1942年に自沈。
(オセアン)
■ パリ / Paris:1914年8月就役。終戦まで生き残った。1945年12月に解体。
フランス 戦艦 ブルターニュ 級 BRETAGNE CLASS
クールベ級の設計を流用し、前級就役からから2年後にフランス海軍が建造した超弩級戦艦。主砲は34.5cm砲塔5基を搭載。配置は背負い式に前部艦橋前に2基、後部艦橋後ろに2基、船体中央部に1基だった。
船体中央部分の砲塔が中央に配置されたことにより、舷側の水雷に対する防御壁をより多く設置できるようになり、防御力が上昇している。
これらの主砲は、最大発射角12度で14,500mの射程を持っていた。
副砲はクールベ級とほぼ同じレイアウトとなり、13.8cm砲が22門搭載され、両舷の第一甲板砲郭に各9門、第二甲板砲郭に各2門配置された。
煙突は前部艦橋後ろに1本、その後ろの砲塔をまたいで1本の計二本が設置された。 〇 装甲:舷側 270mm 〇 排水量:23,230 t 〇 全長:166 m 〇 全幅:26.9 m 〇 機関: ニクローズ式混焼ボイラー ×24、パーソンズ式蒸気タービン 4軸 〇 機関出力:29,000 hp 〇 速力:20 ノット 〇 乗員数:1,130 名
13.8cm55口径単装砲 22基
47mm単装砲 4基
45cm水中魚雷発射管 4門
機雷 30個
Armament:6× 340mm/45caliber twin gun turret
22× 138mm/55caliber gun
4× 47mm gun
4× 450mm torpedo
30× naval mine
甲板 70mm
司令塔 314mm
砲塔前面 400mm
バーベット 270mm
Armor:belt 270mm
deck 70mm
conning tower 314mm
turret(front) 400mm
barbets 270mm
Displacement
Length
Beam
Propulsion: 24× Boiler & 4× Parsons steam turbine
Power
Speed:20 Knots
Crew
近代化改装
●主砲の発射角を23度に改め、射程を26,300mに延長した。また7.5cm単装高角砲または10cm高角砲を船体中央部の甲板上に追加装備し、13.2mm4連装機銃も追加して対空能力を強化した。
●改良された照準装置と測距儀を備えた前部艦橋は三脚マスト式となり、大型化したものになった。
●ボイラーは重油と石炭の混合燃焼式から重油専用ボイラーに切り替えが行われた。
ブルターニュ級 建造艦
■ ブルターニュ / Bretagne:1915年9月就役。1940年7月にイギリス艦隊の戦艦による砲撃を受けて轟沈した。
■ プロヴァンス / Provence:1915年6月就役。1942年に自沈。
■ ロレーヌ / Lorraine:1916年7月就役。終戦まで生存。船体中央の砲を降ろし、水上偵察機用の格納庫と射出機を代わりに搭載。航空機運用能力を高めている。
フランス 戦艦 ダンケルク 級 DUNKERQUE CLASS
クールベ級やブルターニュ級などが、船体のほとんどの長さに装甲防御を施していたのに対し、本級ではイギリスのネルソン級を参考にして集中防御形式を採用して主砲も前部に集中配置している。
その一方で防御力は徹底され、28cm砲弾、航空爆弾、魚雷に対する対弾性能を持たせるために、排水量の4割り近くを装甲材の重量に充てている。対応した主砲の口径が28cmなのは、ドイツの装甲艦を交戦相手に設定しているからである。
主砲は33cm4連装砲という他国では見られないもので、2門ごとに仕切りが設けられてそれぞれ可動する。仕切りは砲塔に敵弾が命中した場合に砲塔要員を全滅させない効果があった。前部に2基を配置するデザインは、連装主砲4基を採用した場合と比べ重量を3割程度カットできた。
本砲は、口径は控えめながら発射角35度で最大射程が41,700mに達する長射程砲であった。
副砲は13cm4連装砲3基を船体後部に後ろ向きに搭載し、その連装砲を船体中央の両舷に搭載した。
船体中央部には、探照灯を側面に取り付けた煙突が1基設置されている。 〇 装甲:舷側 248mm 〇 排水量:26,500 t 〇 全長:214.5 m 〇 全幅:31.1 m 〇 機関: インドル式油焼ボイラー ×6、ラトー式蒸気タービン 4軸 〇 機関出力:112,500 hp 〇 速力:29.5 ノット 〇 乗員数:1,431 名
13cm45口径4連装砲 3基と連装砲 2基
37mm連装機銃 4基
13.2mm4連装機銃 8基
射出機 1基と水上偵察機 4機
Armament:2× quadruple 330mm/52caliber guns
3× quadruple 130mm/45caliber gun and 2× twin same gun
4× quadruple 37mm anti air gun
8× quadruple 13.2mm machin gun
1× Catapult and 4× Reconnaissance floatplane
甲板 127mm
司令塔 267mm
砲塔前面 337mm
バーベット 345mm
Armor:belt 270mm
deck 70mm
conning tower 314mm
turret(front) 400mm
barbets 270mm
Displacement
Length
Beam
Propulsion: 6× Boiler & 4× Rateau steam turbine
Power
Speed:29.5 Knots
Crew
ダンケルク 級 建造艦
■ ダンケルク / Dunkerque:1937年5月就役。1942年11月に自沈。
■ ストラスブール / Strasbourg:1938年12月就役。1942年に自沈、1943年海上に引き揚げ、1944年8月に沈没。
フランス 戦艦 リシュリュー 級 RHICHELIEU CLASS
WW2 French Battleship Richelieu, Suez, Canal 1944 (full) ©2014 WWIIPublicDomain
ダンケルクを改良した艦として、兵装はダンケルク級と同じレイアウトをとっている。” リシュリュー “はフランス国王のルイ13世に仕えた功労政治家の名前。世界で最後に建造された戦艦のクラスでもある。
本級は建造国がドイツ軍の侵攻を受けて降伏したタイミングでは完成しておらず、スリリングな脱出劇を行わざるを得ない状況に陥った。
本国脱出後に1番艦は自由フランス軍の所属となり、アメリカで改修を受けている。
主砲は38cm4連装砲2基を、前級と同じく艦橋の前に背負い式に搭載。構造はダンケルク級のものとほぼ同じで2門ずつが可動し、中央部に仕切りがあり2門と2門の間には少し広がった間隔が設けられている。
欧米諸国の主砲と遜色ない攻撃力を持つ本砲は、発射角35度で43,000mの最大射程を持つ長射程砲である。内径を削って僅かに拡大することで、イギリス海軍用の38.1cm砲弾を発射することができた。副砲は15.2cm3連装両用砲5基が船体後部と船体中央の舷側に搭載された。
防御は集中防御で、どの部分もダンケルク級の装甲厚を大きく上回っていた。
煙突は、当時では先進的な構造である後部艦橋と一体化した”マック“を世界で始めて設置した。
15.2cm55口径3連装両用砲 5基
10cm45口径連装高角砲 6基
37mm連装機銃 4基
13.2mm4連装機銃 8基
射出機 1基と水上偵察機 3機
Armament:2× quadruple 380mm/45caliber guns
3× triple 152mm/55caliber dual purpose gun
6× twin 100mm anti air gun
4× quadruple 13.2mm machin gun
1× Catapult and 3× Reconnaissance floatplane
〇 装甲:舷側 330mm
甲板 170mm
司令塔 444mm
砲塔前面 430mm
バーベット 405mm
Armor:belt 270mm
deck 70mm
conning tower 314mm
turret(front) 400mm
barbets 270mm
〇 排水量:38,500 t
Displacement
〇 全長:247.9 m
Length
〇 全幅:33.1 m
Beam
〇 機関: インドル・スラ式油焼ボイラー ×6、パーソンズ式蒸気タービン 4軸
Propulsion: 6× Boiler & 4× Parsons steam turbine
〇 機関出力:150,000 hp
Power
〇 速力:30 ノット
Speed:30 Knots
〇 乗員数:1,670 名
Crew
近代化改装
●主砲口径を1mm拡大して38.1cmとし、イギリスの砲弾を発射可能にした。
●対空機銃は40mm4連装機銃16基と、20mm単装機銃48基に更新が行われ、対空兵装を充実させている。
●前部艦橋の上部に3重構造で設置されていた射撃指揮塔のうち、最上部の副砲指揮用のものを撤去。変わりにレーダーアンテナを搭載した。
リシュリュー 級 建造艦
■ リシュリュー / Bretagne:1940年6月就役。1967年12月に退役。
■ シャンバール / Jean Bart:大戦終了後に建造が再開され1955年6月就役。世界で最後に建造された戦艦となった。1970年1月に退役。
■ クレマンソー / Clemenceau:1939年9月に建造中止。1944年8月に沈没。
■ ガスコーニュ / Gascogne:主砲を艦首と艦尾に配置することで、各国の戦艦の射角と同じものにするよう計画されていた。1940年計画中止。
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