大航海時代の中で、より大型で多くの武装と荷物の運送を行うために生まれた”ガレオン船”。時には海戦の主力艦として、時には貿易の積荷を満載して活躍した船でもあります。
今回は、大航海時代にヨーロッパの推進剤のひとつとなり、世界中の海を航行していた船のひとつであるガレオン船を紹介していきます。
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ガレオン船 概要
大航海時代のヨーロッパ各国は鎬を削り、相手を下すための強力な船の開発を推し進めました。そして、既存の船を重武装で圧倒する大型船が必要であるとの結論に至ります。
そのような背景から生み出されたガレオン船は、大航海時代初期に登場した大型船であるキャラック船から発展しました。この船は重砲を搭載して砲撃で相手の船を破壊することが考えられた最初の軍艦でもあります。
甲板上の船首と船尾部分に櫓のような構造体を持ち、船の先端部分は鳥のくちばしのような細長く尖った形状をしていました。
船首部分の櫓はキャラック船に比べると小型になり、湾曲具合もいくらか小さくなって、船首から船尾に向けて高さを増していく外見をしています。
キャラック船よりも大型で重くなったガレオン船は、重量が1,000tに達するものも建造されるようになりました。しかしそのせいで遅くなったため、少しでも受ける風を増そうと船尾に4本目のマストを取り付けたものもありました。
戦闘用につくられた船であるガレオン船のその大容量の積載力は、商用としても非常に有用なものであり、貿易商社が好んで使用する武装商船にもなりました。
ガレオン船 武装
最大の武器は、先込め式の丸い弾を打ち出す大砲でした。
ガレオン船の大砲は、船体中央部分の砲撃甲板に大口径砲を配置する方式を初めて採用しました。また鉄製の中口径砲やマスケット銃も大量に装備され、船首楼、船尾楼、マストから敵艦を撃ちました。
この時代の砲は命中精度が低く、次弾装填まで時間もかかる代物だったため、かなり接近して射撃が行われました。敵艦に接舷して白兵戦を行うことは有効であったため、大量のサーベルやピストルも積み込まれていました。
旧式のキャラック船も大砲を装備していましたが、船首と船尾の櫓に中口径の砲を集中配置し、甲板上に大口径の砲を置いていました。
各国のガレオン船
イギリス
●トライアンフ
3本マストを持つ。イギリスはこのガレオン船を以って当時最強といわれていたスペインの無敵艦隊に対抗した。
●グレートマイケル
1511年に建造された船で、キャラック船からガレオン船に移り変わっていく過渡期の船だった。マストは船体最後尾に4本目が取り付けられ、船首楼もキャラック船の形状に近かった。
2層の甲板のうちの下層が大型砲用の砲撃甲板だった。
当時最強といわれていたスペインの無敵艦隊に対抗しうる船として、任務に就いた。
●セント・マイケル
1569年に建造された巨大なガレオン船で、3本のマストを持ち、2層の砲撃甲板には大砲が横一列にずらりと並んでおり、後に登場する戦列艦に近い特徴を持っていた。
〇 兵装: カノン砲98門
●ゴールデン・ハインド
1577年建造。海賊から海軍提督まで上り詰めたサー・フランシス・ドレイクが世界一周航海を行った艦隊の旗艦を勤めた。98tと小型だったが、軽快で小回りが利いた。
この船でイギリスにとって数々の有益な任務を遂行したドレイクは、エリザベス女王からナイトに叙され、名声と信頼を勝ち取った。
●アーク・ロイヤル
1587年建造。この艦名はイギリス軍艦では何代も受け継がれていくことになるが、この船が初代。
4本のマストを持ち、砲撃甲板は船首と船尾に配置されたものも含めると3層にもなる。アルマダの海戦では、司令官であるハワード卿の搭乗艦になる等重要な役目を任された。
〇 排水量: 800t
〇 兵装: カノン砲50門
〇 乗組員: 425人
スペイン
●サン・マルティン
1588年に建造されたガレオン船で、3本マストに2層の砲撃甲板という重武装の船だった。建造はスペインが行い、ポルトガルの艦隊で軍務についていた。
〇 排水量: 1000t
〇 兵装: カノン砲48門
●サン・ファンデ・ポルトガル
重武装のガレオン船で、無敵艦隊の主力艦として使用された。
〇 排水量: 1029t
〇 兵装: カノン砲50門
●グラングリナ
無敵艦隊の主力艦の1隻。
〇 排水量: 960t
〇 兵装: カノン砲38門
●サンタ・アナ
無敵艦隊の主力艦の1隻。
〇 排水量: 931t
〇 兵装: カノン砲30門
オランダ
●ハーベット
2層甲板のガレオン船で、船体側面に大砲を装備。また艦尾にも大砲を備えていた。1589年ごろに建造。
フランス
●グラン
ビーチ・ヘッドの海戦に参加したガレオン船。4本マストと1層の大型砲用の砲撃甲板、多数の小口径砲を備えていた。
〇 排水量: 1000t
〇 兵装: カノン砲48門
ガレオン船のその後
後に、ガレオン船を改良した戦列艦と呼ばれる軍艦が出現した時代でも、戦闘型のガレオン船は海戦で使用されました。また商用としては帆船時代の終盤である19世紀でも需要があり、未だに使用されていました。
蒸気機関が実用段階に達した19世紀中頃には、戦列艦と一緒に急激に衰退してその活躍に幕を下ろしました。
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