ボロブドゥール 仏教のひとつの到達点 世界遺産を学ぶ

その優れた彫刻や仏教世界の表現によって、仏教建築の最高峰とも言われる” ボロブドゥール ”。19世紀になるまで火山灰の下に埋もれていた遺産としても有名です。「世界遺産を学ぶ」シリーズの第2回は、インドネシアのボロブドゥール遺跡を取り上げます。

ボロブドゥール 概要

Borobudur, Indonesia in 4K (Ultra HD)
©2016 Amazing Places on Our Planet

ボロブドゥールはインドネシアのジャワ島中央部にあるジョクジャカルタ市に存在する寺院遺跡です。

この世界有数の仏教遺跡は、8世紀から9世紀の間にシャイレンドラ朝(※1)によって建造されたあとに放棄され、19世紀にイギリスのトマス・スタンフォード・ラッフルズ(※2)が発見するまでジャングルの土砂の中に埋もれていた遺跡です。[the_ad id=”4424″]

ボロブドゥール 世界遺産としての価値

Sherra TriarosdianaによるPixabayからの画像

優れた彫刻

ボロブドゥールの回廊には仏教の重要な教えである仏陀の生涯や仏教物語、人間の善行悪行に関するレリーフが1460面(※3)に渡って時計回りに掘り込まれており、仏教を教示する優れた石造りの教典といってもよいものです。

この表面積は2,520平方メートルに達し、その全てに優雅で繊細な技巧が施されています。

仏教世界の表現

ボロブドゥールは大乗仏教の世界観である三界をピラミッド状の構造で表現しています。基壇は食欲と淫欲といった人間世界のあらゆる欲が渦巻く欲界、その上の方壇は欲や煩悩から脱却した清らかで純粋な物質や肉体のある色界、その上の円壇は物理世界から昇華して精神のみの存在が住まうとされる無色界をあらわしています。

ボロブドゥールは欲界を5段、色界を3段、無色界を1段とした9段のピラミッド状の構造で、最も上層である精神の崇高さを巧みに表現しています。

仏塔(ストゥーパ)と仏像

Maike und Björn BröskampによるPixabayからの画像

ボロブドゥールには無色界である頂点に巨大な仏塔が置かれ、その下壇には72の小ストゥーパが置かれています。

頂上の仏塔の内部は空洞であり、”無我”を表現しているとされています。一方72の小ストゥーパは一片が20cm程度の石を積み重ね、内部の仏像を見れる四角い穴ができるように絶妙にずらして造られています。

またボロブドゥールには多数の仏像が安置されており、欲界である下層5段には1方位に108体ずつの432体、ストゥーパの内部に72体の合計504体の仏像が置かれています。[the_ad id=”4425″]

ボロブドゥール 世界遺産の登録内容

この世界遺産はボロブドゥール遺跡単体で登録されているのではなく、パウォン寺院ムンドゥー寺院の計3つの寺院が登録されています。遺跡はほぼ一直線上に並んでおり、仏教の複合施設として建造された説も唱えられています。

世界遺産登録名 ボロブドゥールの仏教寺院群
(Borobudur Temple Compounds)

世界遺産登録年 1991年

世界遺産登録基準 内容

人類の創造的才能
ボロブドールの仏教寺院群は10層のピラミッド状の露天回廊を持ち、その頂上に大きな鐘形のドームがあります。
ドームを中心にして周囲の仏塔(ストゥーパ)と見事に調和した構造は仏教建築のひとつの到達点として、または記念碑的な芸術として世界遺産のⅰ類の要素を持っています。

人類価値の相互交流
ボロブドゥール寺院遺跡は8世紀初頭から9世紀後半のインドネシアの芸術と建築において非常に価値のある存在であり、後の13世紀半ばから16世紀初頭の建築に大きな影響を及ぼしたと考えられています。
以上のことから世界遺産のⅱ類の要素を持っています。

歴史の出来事・伝統・思想
信仰・芸術・文学
への大きな影響力
仏教ではとても重要な意味を持つ蓮の形にレイアウトされたボロブドゥール寺院は、構成する10層の露天回廊に悟りに至るまでに到達しなければならない段階が表され、仏教世界をよく表現しています。
中世インドネシアの人々に先祖崇拝の考えと涅槃に関する仏教の概念が伝わっていた事を示す遺物であり、世界遺産のⅵ類の要素を持っています。

※補足
補足1:8~9世紀にジャワ中央部で栄えた王朝で、国教は大乗仏教。9世紀中ごろに権力争いに敗れ、スマトラに敗走した。

補足2:1781年生-1826年没。若年時から東インド会社に勤務。イギリス植民地を開拓する中で商業都市シンガポールを建設したことで有名。ほかにもラフレシアの発見など、様々な分野で勢力的に活躍した人物。

補足3:発見当初は1300面とされていたが、後の調査で最下層の基盤に160面が彫られていることが確認された。

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ボロブドゥールの謎

ボロブドゥールは19世紀に発見されるまで土砂に埋もれてしまっていた。これほど精巧な建造物を造れる文明がボロブドゥールを捨ててなぜ忽然と姿を消したのか。また発見時に覆われていた土質が土台に使われた土質と一致しているため、完成と同時に埋められてしまった説も存在している。

以上がボロブドゥールの謎として有名なものです。

ムラピ山はすごい火山

Julius SilverによるPixabayからの画像(注:画像はイメージであり、ムラピ山ではありません)

実は謎を解く鍵と考えられるのは遺跡の数十キロの距離に存在しています。インドネシアでもっとも活発な火山であるムラピ山です。

ムラピ山は数年で噴火する非常に活発な火山で、大量の火山灰を放出します。噴火すると遺跡は大雪が降ったような様相となり、噴火の威力の凄さを物語ります。最近では2018年に噴火して被害が出ました。

降灰するといくら肥沃であっても農作物が駄目になり、食糧事情が急激に悪化して都市の維持が難しくなります。昔は重機が使えないので、灰を除去するのに何年もかかったかもしれません。たとえすぐに除去できたとしても、作物に被害が及び凶作になったことでしょう。

西暦1000年ごろにジャワ島で地震・津波・噴火が大規模に発生して人口が激変したため遷都した説があり、この複合災害がボロブドゥールから人々を遠ざけた原因でしょう。

また誰かが埋めた説も火山が犯人です。先述するムラピ山によって遺跡一帯の土台は火山灰です。放棄されたあとに何十回も噴火した(過去500年の記録で70回程度)でしょうから、発見時には火山灰質の土砂に埋もれて小山のようになっていたのではないでしょうか。

火山灰でできた土台に築いた寺院が火山灰に埋まったことで、上も下も同じ土質になるのです。しかし、仮説を完全に否定する証拠もない(古い遺跡ほど当時の証拠が消えていくため決定的な証拠が少ない)ため真相はやはり謎です。

火山との複雑な関係

ボロブドゥールは火山によって灰を降らされて住民を追い出され、最後は埋められてしまいます。しかし寺院は火山岩を加工して造られたいわば火山の遺跡とも言える存在なのです。

人の理が通じない火山の存在が、仏教の衰退を早めたのかもしれません。この複雑な関係が、この遺跡の魅力をいっそう引き立てているのかもしれませんね。

ひとつだけ言えるのは、そんな噴火のペナルティーをもろともせずに数十年にわたって見事な寺院を作り上げた先人の知恵と労力もまた世界に誇れるものだということです。[the_ad id=”4336″][the_ad id=”4426″]

ボロブドゥール 所在地

ボロブドゥール遺跡はジャワ島中心部にあり、遺跡を保有する行政区はジョクジャカルタ市になっています。

ジャカルタ国際空港からは200km程度離れているものの、地続きであるためバス、列車の利用が可能です。また飛行機の便もあります。

列車の場合はジャカルタから8時間程度で到着します。

インドネシア 飛行時間と料金 (目安)

©stuxによるPIXABAYからの画像

日本からジャカルタまでは、直行便で7~8時間が目安です。

格安航空と呼ばれる安価な航空券の場合、往復で約6,0000円から利用可能なものが多い印象でした。

ツアーの場合はどの航空会社を利用するかや内容によって違いますが、安いものでも180,000円ほどのお値段(大人1名料金)となっています。[the_ad id=”4427″][the_ad id=”4336″]

インドネシアの気候

インドネシアの気候は乾季(4月~10月)と雨季(11月~3月)の2つの季節に分かれています。

気温も25度から30度前後と、暑い温度でほぼ変化がありません。

インドネシアの言語

インドネシアの国語としては、インドネシア語が話されています。この言語はマレーシア語と非常に似ており、お互いに支障なく話せるほどだと言います。

ボロブドゥールがあるジャワ島ではインドネシア語と、現地言語であるジャワ語が話されています。簡単な単語を覚えるのであれば、国語のインドネシア語だけでよいでしょう。

インドネシアの通貨・両替

©EmAjiによるPIXABAYからの画像

インドネシアの通貨はルピア(Ruphia)です。

現在の1ルピアは0.0078円(10,000ルピアで78円)となっており、近年では円高傾向で推移しています。

紙幣は1,000、2,000、5,000、10,000、20,000、50,000、100,000の7種類が流通しており、貨幣は1、25、50、100、200、500の6種類が流通しています。

両替について

日本の銀行(三井住友銀行しか取り扱ってない)で両替、両替宅配サービスで両替、現地の両替所で両替するといった方法があります。

ルピアは現地の両替所が最もお得なレートで両替できるらしいです。[the_ad id=”4427″][the_ad id=”4336″]

インドネシアの電力事情

©OpenIconsによるPIXABAYからの画像

電圧

インドネシアで普及している一般家庭用の電圧は220Vで、周波数は50Hzとなっています。

日本のものを使う場合は変圧器を持参するか、世界の電圧に対応している(100V-240Vと表記)ものを持って行きましょう。

疑問に思う人も多いと思いますが、旅行の資料などの紹介では、電圧が220Vであったり230Vであったりと、ばらつきがあります。これはどちらが正解なのでしょうか?

答えはどちらも正解です。

電気は電線で遠く離れた場所から送られてきますが、このとき電線では電圧降下によって微量に電圧が下がっています。

よって遠く離れた場所でも電圧が規定値におさまるよう、電力会社は電圧を高めにして送電しなければなりません。

なので、地域によって220Vかもしれないし、230Vかもしれない訳です。電化製品はその国の規定電圧の範囲内で動作するように設計されるので、細かい電圧の違いは気にする必要ありません。

コンセントプラグの種類

電気で気にすべき要素はもうひとつ、プラグの種類です。

インドネシアのコンセントは日本のように縦二本の形ではありません。

さらにインドネシアは広大なため、数種類のコンセントプラグ形式があります。

ボロブドゥールが存在するジャワ島ではC型プラグが一般的です。しかし、稀にC型プラグ以外の場所もあることから、B・C・SE型などに対応できるマルチプラグを持っていると安心です。

渡航安全情報 (2020/02)

©Free-PhotosによるPIXABAYからの画像

レベル1で注意を要する

多数の民間人を巻き込んだ大規模なテロが近年発生しているため、インドネシアのほぼ全域が危険レベル1となっています。

どのような場所・時間・人々が狙われやすいかの情報を所得し、十分に注意して行動するようにしてください。[the_ad id=”5357″]

衛生・病気について

病院の対応レベル 低い

人口に比べ医師の数が追い付いていないと言われており、重病を発症した場合や高度な手術が必要なときは、現地ではなくシンガポールなど他国の病院に搬送されることもあるそうです。

日本と比べて人口当たりの病床数は1/13と非常に低く、満足な医療措置が受けられない又は医療措置までに時間が掛かることが予想されます。

健康に不安がある方は、持病が発症した場合にどのような扱いになるかをしっかりと予想し、対策を講じてください。

衛生状態 低い

衛生状態は日本に比べて低いため、食品は加熱処理された食品を食べ、生水・水道水は避けて飲料水はミネラルウォーターを飲用することが大切です。

氷についても、消毒された水から製氷されたと確認が取れない場合は、飲用しないほうが良いでしょう。

どうしても生ものを食べたい場合は、多少金額が張っても衛生状態の良さそうなお店を選び、屋台は避けましょう。

旅行時に注意すべき病気

腸管感染症

腸炎、腸チフス、赤痢アメーバ、A型肝炎など

衛生状態の関係から現地の住民もよく発症している病気です。

蚊による感染症

マラリア、デング熱、ジカ熱、チクングニア熱など、ネッタイシマカヒトスジシマカ(この種は日本にもいる)が媒介する病気です。

現地で高熱を発症した場合は蚊に刺された覚えが無いか確認しましょう。

結核

インドネシアは結核が多く発生しており、注意が必要です。

咳が止まらないなどの症状が長く続く場合はこの病を疑いましょう。

H5N1型(鳥)インフルエンザ

インドネシアは鳥インフルエンザ大国でもあり、感染者数は世界最大級を擁するといわれています。

狂犬病

狂犬病ウイルスを持つ動物に噛まれることで感染する、危険性の高い感染症です。主に野犬に噛まれることで感染します。

犬だけに限らず、猫、コウモリ、猿などもこの病を持っている可能性があるため、動物から噛まれた場合は注意しましょう。

エイズ

主に性行為により感染する、致命的なウイルス性感染症です。

インドネシアでは60万人の感染者が存在すると推計されており、近年でその増加率が跳ね上がっていることが問題となっています。

呼吸器系の病

インドネシアは大気汚染が深刻な国であり、人口が密集する都市部でこの病が多いとされています。

滞在中に咳が止まらなくなったり、喘息を持病で持っている人は悪化したりする可能性があります。マスクを常備するなどして対策しましょう。

また上述した結核の発症を見分け難くなるため、咳の症状には特に注意が必要です。

予防接種

発症した場合は非常に辛いため、予防接種して渡航することが望ましいです。

また上述したように、医療レベルは日本に比べ低いため、十分なワクチン接種が現地で受けられない可能性が高いとされています。

さらに、インドネシアにはワクチン未接種の児童が数多く生活しており、はしか、風疹、水ぼうそうの病が常時発生していることも覚えておきましょう。

外務省によると、A型肝炎・B型肝炎・破傷風・日本脳炎・腸チフスの予防接種を行うことを推奨しています。

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