ペトラ 砂漠に佇む行商の神殿 世界遺産を学ぶ

大昔の人々の確かな技術力と情熱の結晶が生み出した、過去からの素晴らしい贈り物である世界遺産。それらをより深く知ってもらうために新たにスタートした「世界遺産を学ぶ」シリーズ。記念すべきシーズン1の第1回は、数多くの太古の商人たちを癒した行商都市のペトラ遺跡を取り上げます。

ペトラ 概要

Petra, Jordan in 4K Ultra HD
©2017 Amazing Places on Our Planet

ペトラは砂漠の中に築かれた行商都市であり、シークと呼ばれる岩盤の隙間にできた細長い谷の奥深くに突然現れます。ペトラの建造物は岩盤の表面に設計図を描き、それに沿って掘り進むという手法によって造られています。

行商都市として栄えたペトラはエジプト、フェニキア、シリア、アラビアの交易の場となり発展しました。

ペトラは十字軍の拠点として使用されたのを最後に放棄され、忘れられた存在になりました。そして19世紀に学者(※1)によって発見されるまでは、地元住民しかその存在を知っていませんでした。[the_ad id=”4424″]

ペトラ 世界遺産としての価値


精巧なヘレニズム建築

ペトラで建造された建物にはヘレニズム建築が多く取り入れられ、柱の上部に壮麗な装飾を施すコリント式建築でつくられた柱などにそれを見ることができます。また円形劇場、公衆浴場などの公共建築物は古代ギリシャ・ローマの形式をとっています。

2000年前に東洋と西洋の文化が交じり合った確かな証拠として、その姿を現代に伝えています。

ペトラの民のしきたり

ヘレニズム建築だけでなく、ペトラの民独特の習慣が融合したここならではの建物も見ることができます。

ペトラの民は墓と記念碑を建てることでその力を後世に示そうとしたため、数百の記念碑と石に刻まれた墓が残されています。

また公共施設などにヘレニズム建築を取り入れていますが、普段の生活で使う部屋や庭などは中東様式のものになっています。

なお、建造物のみで家具類があまり発見されていないことから、ペトラの住民は木製の家具を多用していたと推測されています。

エル・カズネ


Dimitris VetsikasによるPixabayからの画像

ペトラで最も有名な遺跡はエル・カズネです。

エル・カズネ(ハズネとも)はアラビア語で「宝物庫」を意味する言葉ですが、調査ではここは位の高い人物の墓として使われたことが分かっています。

その荘厳で神秘的な雰囲気からハリソンフォード主演の映画「インディジョーンズ・最後の聖戦」(※2)のクライマックスの舞台として有名になり、ヨルダンの誇れる遺跡となりました。

エドディル修道院

skeezeによるPixabayからの画像

ペトラでもうひとつ存在感を放つ建物がエドディル修道院です。

エル・カズネと同様の建築様式でより大きく、ナバテア人の神殿として建造されたといわれています。後にビザンティン帝国(※3)の支配を受ける時代には、ここを修道院として使用したため「エドディル修道院」と呼ばれるようになりました。[the_ad id=”4425″][the_ad id=”4341″]

貯水技術

Gero BirkenmaierによるPixabayからの画像

ヨルダンの平均降雨量は少量であり、とても水が豊かな土地とは言えません。都市として人々を養うためにどのようにして水を確保したのでしょうか。

太古のパイプライン

陶器製のパイプを数多く組み合わせてパイプラインを造り、最も近い水源地から水を引いていた痕跡が見つかっています。円管を取り付けたようなくぼみと、水をスムーズに流すための傾斜角が見つかっています。

近隣に点在していた湧き水などの水源地、小規模なダム、100近くの貯め池状の貯水槽。これらを複雑なパイプラインで結び合わせ、ペトラに水を供給していたことが有力説とされています。

さらに引いてきた水を利用した庭園も備え、人口のオアシスを管理していた遺構も見つかっており、高い技術力で砂漠の乾燥に打ち勝っていたことを示しています。

ペトラの発掘率はまだ僅か

ペトラの発掘状況は19世紀から今まででせいぜい遺跡全体の一割程度といわれており、土砂の中から建設途中で放棄された構造物や彫刻といった新たな遺構が次々と見つかっています。

未だ日の目を見ることのない太古の文明の証たちが砂の下で眠っているのです。

発掘が進むことでまた違った顔を見せ、世界遺産としての価値もさらに増すようになるでしょう。[the_ad id=”4426″][the_ad id=”4336″]

 

ペトラ 世界遺産の登録内容

ペトラの主な遺構は行商都市の顔ですが、この地区にはペトラが建造されるはるか以前から鉱山施設がつくられており、鉱業遺跡としての側面もあります。このことからペトラは非常に広い年代における価値を持っています。

世界遺産登録名 ペトラ
(Petra)

世界遺産登録年 1985年

世界遺産登録基準 内容

人類の創造的才能
岩盤に精巧に造られた寺院や墓所の構造物の造形はすばらしく、人々を釘付けにする魅力を放っています。
またこの遺跡の持つ高度な貯水システムは、砂漠で多数の人々を生活させた技術として評価できるため、世界遺産のⅰ類の要素を持っています。

過去の文明の証拠
アッシリアからヘレニズム時代までの文明の影響を受けた建築様式、そしてナバテア人の紀元前4世紀から紀元1世紀までの文明の証拠として世界遺産のⅱ類の要素を持っています。
さらに十字軍が築いた要塞や、旧約聖書に関係する遺跡といったものまであり、幅広い時代において人々がペトラに関係したことを示しています。

人類の歴史上重要な
建築・科学技術の
優れた見本
ペトラに存在する建造物には、東洋文明と西洋文明が始めて融合したオリエント建築の意匠が現れています。
また紀元前1世紀から紀元初期の優れた治水技術の見本としての価値も高いです。
さらに太古の人々が築いた鉱業施設から、鉱業技術の見本としての価値もあります。
※補足情報
補足1
スイス出身の探検家。アフリカと東洋に魅力を感じ、より深く学ぶためムスリムに改宗するなど常人をこえた熱意の持ち主だった。アブシンベル発見2年後の1817年に32歳の若さで赤痢で死去。

補足2
1989年公開のハリソン・フォード主演の映画。インディーがナチスよりも先に、奇跡をもたらす聖杯にたどり着くために奔走するというストーリー。インディーの父親は、ジェームズ・ボンド役で有名だったショーン・コネリーが演じた。なお映画では神殿は崩れてしまう。

補足3
西暦395年以降の東ローマ帝国。歴代皇帝では2代目のユスティニアヌス1世が有名。
1453年にオスマン帝国(現在のトルコ)により首都コンスタンティノープルが制圧され滅亡した。

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ペトラの所在地

ペトラはヨルダン南西部のワディムーサという町にあります。ここは死海とアカバ湾(紅海のサウジ側の先端)の中間位置にあり、ヨルダンの首都アンマンから150kmほど離れています。

アンマンからバスを利用する場合は3時間から4時間ほどで到着します。タクシーも利用出来ますが、バスの何倍も料金がかかることに注意しましょう。

ヨルダン 飛行時間と料金 (目安)

©PexelsによるPIXABAYからの画像

日本からヨルダンまでの飛行時間は15時間~19時間程度が目安です。日本からヨルダンに向かう直行便は運行していないため、最低一回の乗り継ぎがあります。

飛行機の往復料金は、安い海外の航空会社のもので80,000円ほど。国内航空会社で150,000円ほどとなっています。

ツアーの場合は安くても300,000円以上の料金を多く見かけました。

ヨルダンの気候

ヨルダンの気候は西部が地中海性気候で、東部は砂漠性気候です。夏は高温乾燥となるため注意しましょう。

冬に寒波が来たときには大雪が降ることもあるため、冬に訪れる際は降雪情報に注意してください。

一般に気温が適温であり、気候も安定する春(3月から5月)と秋(10月から11月)に旅行するのが良いとされています。

ヨルダンの言語

ヨルダンの公用語はアラビア語です。

ですが英語教育が比較的進んでいる国と言われており、英語の受け答えなら問題なく意思疎通ができると考えてよいでしょう。

ヨルダンの通貨・両替

ヨルダンの通貨はヨルダン・ディナール(Jordan Dinnar)です。

現在の1ヨルダン・ディナールは154円となっています。

紙幣は主に1、5、10、20、50の5種類のヨルダン・ディナールが流通しています。

硬貨の単位はフィルスで、1000フィルスが1ヨルダン・ディナールと同じ価値になっています。フィルスは10、25、50、100、250の5種類が流通しています。また1ヨルダン・ディナール硬貨と1/2ヨルダン・ディナール硬貨もあります。[the_ad id=”4427″][the_ad id=”4336″]

ヨルダンの電力事情

ヨルダンで普及している一般家庭用の電圧は230Vで、周波数は50Hzとなっています。

日本のものを使う場合は変圧器を持参するか、世界の電圧に対応している(100V-240Vと表記)ものを持って行きましょう。

ヨルダンのコンセントプラグは多くの種類が混在しており、C・D・F・G・Jの5種類が存在しています。

どのコンセントでも対応可能なマルチプラグを準備しておきましょう。

渡航安全情報 (2020/1)

©Free-PhotosによるPIXABAYからの画像

ヨルダンは全域がレベル1

民間人を巻き込んだテロが発生する危険があるため、ヨルダン全域が危険レベル1となっています。

どのような場所・時間・人々が狙われやすいかの情報を所得し、十分に注意して行動するようにしてください。

ヨルダン北部のシリアに面した国境線は軍事閉鎖区域に指定されていることや、トルコが隣国のシリアで軍事作戦を行っているため、危険レベル2であり危険です。[the_ad id=”4427″][the_ad id=”5357″]

衛生・病気について

©Clker-Free-Vector-ImagesによるPIXABAYからの画像

病院の対応レベル 普通

英語が話せる医師が多いため、意思疎通が中東地域ではしやすいとされています。

看護師は日本の水準の半分といわれており、迅速な医療対応やに欠ける可能性があります。

資金力ある私立病院の施設が充実しており、厚生省では費用が多少かかるものの安全性を考えて私立病院の受診が推奨されています。

また高額な医療費に対し、海外旅行の際の傷害保険への加入が推奨されます。

衛生状態 やや低い

食虫毒や経口感染症を防ぐため、食品は加熱処理された食品を食べ、生水・水道水は避けて飲料水はミネラルウォーターを飲用することが大切です。

旅行時に注意すべき病気

腸管感染症

赤痢アメーバ、A型肝炎など

衛生状態の関係から現地の住民もよく発症している病気です。

熱中症

ヨルダンの気候は夏の期間が多い上に湿度も低いため、脱水症状が起こりやすいです。

ミネラルウォーターのボトルを携帯するなどして適切な水分を補給しましょう。

狂犬病

狂犬病ウイルスを持つ動物に噛まれることで感染する、危険性の高い感染症です。主に野犬に噛まれることで感染します。

犬や猫などの動物から噛まれた場合は注意しましょう。

予防接種

外務省によると、A型肝炎・B型肝炎・破傷風・腸チフスの予防接種を行うことを推奨しています。

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