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アブシンベル 概要
EGYPT: Abu Simbel Temples – Nubia
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アブシンベル神殿は19世紀に探検家(※1)により発見された時には大部分が砂に覆われており、巨像の顔だけが砂の下から突き出ている状況でした。
この神殿は100mほどの距離を置いて大神殿と小神殿に分かれています。大神殿はファラオと神を讃えるものであり、小神殿はラムセス2世(※2)の正妃であるネフェルタリ(※3)と女神ハトホルを讃えるものです。
アブシンベル 世界遺産としての価値
大神殿
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正面に21mの高さのラムセス2世の像を4体も並べ、その下には王の親族たちの小さな像を並べています。4体のうち一体は建造から数十年後に起こった地震で上半身が崩れて足もとに転がっています。
自分だけ4体も大きいの造っといて、他の人のはミニサイズかよ!と思った身内も多かったと思いますが、ファラオは神の化身とも見なされる絶対的な王だったため他の者と差別化を図る意味合いもあったのでしょう。
ファラオのレリーフ
ガデシュの戦いにおけるラムセス2世の様子やリビア戦役のものなど、戦争と勝利を描いたものがあります。
レリーフに限らず内部にある装飾の多くはラムセス2世の武勇伝を表すものであり、訪れたものにファラオの絶対的な力を示したことでしょう。
太陽の奇跡
大神殿の特異な光景として、太陽光が神殿の奥深くまで届き、最深部に置かれているラムセス2世の石像と神像を照らし出すという現象が起こります。この現象は10月21日と2月22日にのみ起こります。
光が当たるのは4体のうち3体で、ほかの一体は地下の世界の象徴であるプタハ神の像であり、意図的に光を当てないようにしています。
これは神殿の巧みな設計によって太陽光が当たるようにしており、その技術の高さは賞賛すべきものがあります。
このように太陽光を上手く使いこなした神殿の設計は、太陽神ラーと深い関係で結ばれたファラオの神殿として、非常に粋なものと言えるでしょう。
小神殿
©Marina_PerevalovaによるPIXABAYからの画像(タイトル)
神殿正面には削り出された高さ10mのラムセス2世とネフェルタリ王妃の石像が6体並んでいます。
ネフェルタリ王妃の像はラムセス2世の像と同じサイズです。ファラオと等しい大きさで造られることは非常に稀なことだと言われており、ラムセス2世のネフェルタリ王妃への想いの強さをうかがえます。
内部は大神殿と同じくレリーフがありますが、ネフェルタリとどのような人生を歩んだかや、ハトホル神への贈り物、ほかの神たちを描いた内容となっています。
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水没の危機
1954年にエジプト政府がアスワンハイダムの建設を決定したことで、この遺跡群は水没の危機にさらされます。
もともとダムは1902年に遺跡の下流に建設されていました。しかし、このダムではナイル川の氾濫を食い止められないことや、農業・漁業・電力事業を大きく前進させるためにより大型のダムを上流に建設することが決まったのです。
スエズ運河の国有化やアメリカの援助中止など、様々な国際問題がありましたが、ソ連の巨額の資金援助やエジプト政府とスーダン政府の遺跡保護の要請を受けてのユネスコの世界レベルでの働きかけにより、ダムは工事と遺跡保護を進めます。
アブシンベル神殿は確実に水没するためどうにかして高台に移設しなければなりませんでした。そのため特殊な切断機を使ってブロック上に一旦解体し、移設先でエポキシ樹脂を流し込みながら再構築を行う方法が考案されました。
移転は成功し、現在ラムセス2世の石像はアスワンハイダムのダム湖を見下ろしています。
アブシンベル神殿は最重要遺跡ということで難を逃れましたが、その一方で住民が故郷を失ったり、重要度の低い遺跡が水没したり、後述するビルハルツ吸血住虫の生息域が広がるなど、物事を変えようとすると想像した以上の影響が出るというジレンマを抱えるようになりました。
アブシンベル 世界遺産の登録内容
世界遺産登録名 アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群
(Nubian Monuments from Abu Simbel to Philae)
世界遺産登録年 1979年
世界遺産登録基準 | |
ⅰ 人類の創造的才能 |
|
ⅲ 過去の文明の証拠 |
|
ⅵ 顕著であらゆる価値に繋がる出来事・伝統または 思想・信仰・芸術・文学に直接または実質的に関連があるもの (この価値は、他の基準との複合的関連があることが望ましい) |
スイス出身の探検家。アフリカと東洋に魅力を感じ、より深く学ぶためムスリムに改宗するなど常人をこえた熱意の持ち主だった。アブシンベル発見2年後の1817年に32歳の若さで赤痢で死去。ペトラも彼が発見している。
●補足2
最も有名なファラオ。紀元前1,100年頃のエジプトを統治したが、最初期のファラオが統治してから2,000年が過ぎており、エジプト王朝の期間のなかでは後半に活躍した人物といえる。66年という在位期間が示すとおり絶大な権力をもち、自身の像や名前が刻まれた建物を建てまくった上に先代ファラオたちの建物にも自分の名前を刻んだため、現在でもエジプトに彼の名前が多く残っている。
身長約180cmと当時としては非常に大柄で推定死亡年齢が90歳近くという、神に愛された王でもあった。ちなみにラムセス1世は祖父である。
●補足3
ラムセス2世と13歳の時(ラムセス2世は15歳)に政略結婚したとされる王妃。最も最初に王妃となったとされ、ラムセス2世との間に儲けた子供の記録が多く残っている。50歳にならずに亡くなっており、他人の名札を上書きするようなどこぞのファラオと違って記録があまり残っておらず、未だに詳細不明の王妃。
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エジプト 飛行時間と料金 (目安)
日本からエジプトへの直行便は「エジプト航空」の便のみで、13時間程度かかります。
格安航空と呼ばれる安価な航空券の場合、往復で約9,0000円から利用可能なものが多い印象でした。
ツアーの場合はどの航空会社を利用するかや内容によって違いますが、安いものでも200,000円ほどのお値段(大人1名料金)となっています。
アブシンベル 所在地
アブシンベルはエジプトの首都カイロから1000km離れた最南部付近にあり、スーダンとの国境まであと僅かの位置にあります。遺跡を保有する行政区はアスワンになっています。
アブ・シンベル空港(エジプト国内線)が目と鼻の先に存在しているため、飛行機を利用するのであればすぐに石造りのファラオに出会うことができます。
エジプトの気候
エジプトは降水量が非常に少ない国ですが、冬場は雨や雪が集中する時期もあります。
一般的に2月ごろや10月、11月が観光日よりといわれています。
3月後半から4月によく発生する砂嵐は危険で、あらゆる機関が休みになる可能性が高いため、これらの季節に訪れる際は注意しましょう。
エジプトの言語
エジプトの公共語はアラビア語です。ほかには英語、フランス語、ヌビア語が話されています。
英語教育がしっかりした国であるため、外国人向けのレストランやホテルなど観光客が多く訪れる場所では英語でのコミュニケーションをとりやすいとされています。
エジプトの通貨・両替
エジプトの通貨はエジプトポンド(EGP)です。そしてより価値の小さいピアストルという単位もあり、100ピアストル=1エジプトポンドとなっています。
現在の1エジプト・ポンドは7円程度となっており、近年ではやや円高傾向に推移しています。
紙幣はエジプトポンドが6種類(5、10、20、50、100、200)、ピアストルが2種類(25、50)流通しています。
硬貨は主に3種類(25ピアストル、50ピアストル、1エジプトポンド)流通しています。
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エジプトの電力事情
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電圧
エジプトで普及している一般家庭用の電圧は220Vで、周波数は50Hzとなっています。
日本のものを使う場合は変圧器を持参するか、世界の電圧に対応している(100V-240Vと表記)ものを持って行きましょう。
コンセントプラグはC型とF型が普及しているため対応できるマルチプラグを持っていると安心です。
渡航安全情報 (2020/02)
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都市圏以外は危険
2020年2月時点のエジプトは、都市部を除いた国土の大部分が非常に危険な地域に指定されています。よって興味本位でそれらの地域に行くのは絶対にやめてください。
エジプトでは過去数年間で大規模なテロが発生しており、自分がいたときに巻き込まれる可能性はゼロではないことを覚えておきましょう。
標的にされやすい教会やインフラ施設、デモ・集会場所が近くにある場合は避けるようにし、常にエジプト国内に関する治安情勢を確認できるよう準備をしておきましょう。
■レベル1の地域
以前はより危険でしたが積極的な治安活動により危険度が下がったと判断され、ナイル川に沿った主要都市地帯は比較的安全な地帯とされています。なおカイロからアブシンベルまではこのレベルに収まっています。
■レベル2の地域
ナイル川に沿った主要都市から西側の地域は治安が悪く、テロの標的にされる恐れがあります。
■レベル3の地域
エジプトのスエズ運河をはさんだ東側のシナイ半島はISILの活発な地域に指定されており危険です。またエジプトの西側に位置するリビア国境地帯も内戦中であることから危険です。
衛生・病気について

病院の対応レベル やや低い
特に医療関係者の技能が未熟と言われており日本並の衛生概念を期待出来ないとされ、投薬・輸血などの取り違えが発生する可能性があります。
また基本的に医療費は前払いということも知っておきましょう。
値段は張りますが、十分に施設が整った病院を調査すること。そしてエジプト国外への緊急搬送に備えた医療保険に加入しておくことをお勧めします。
衛生状態 やや低い
衛生状態は日本に比べて低いです。
エジプトでは食中毒や経口感染症が多いため、ミネラルウォーターを飲むことが確実です。屋台で売られている水や消毒の確認が出来ない水は飲まないようにしましょう。
食事については生ものの食事はなるべく避け、火が通ったものを食べるようにして下さい。
川には皮膚から感染する厄介な寄生虫がいるため、川に入ることは控えましょう。
エジプトは夏季の気温が非常に高く、日差しも強いため、水分補給と日焼け止め対策を十分に行ってください。
交通マナーが悪いとされているため車を運転する際は注意が必要です。
旅行時に注意すべき病気
●流行性脳脊髄膜炎
エジプト国民の1割が保菌者といわれるほど身近な病であるため、ワクチン接種は必須といえるでしょう。
●寄生虫
最も危険とされているのはビルハルツ住血吸虫であり、川や湖に入ることで感染し、長期放置は癌などの致命的な症状を引き起こします。尿路系に異常が発生するのが特徴のため、排尿時に違和感を感じたり、血尿になった場合はこの寄生虫を疑いましょう。
ほかにもアメーバ赤痢、条虫、ランブル鞭毛虫、吸虫といった寄生虫について注意が呼びかけられています。
●肝炎
エジプトで注意するべきなのはA、B、C型の3種類です。
A型は感染者の糞便で汚染された食物からの経口感染が主な感染源です。衛生状態が悪そうな場所での食事や、出所が不明の生ものを加熱せずに食べることは避けましょう。
B、C型は血液感染が主な感染要因です。使い回されるなどした不衛生な医療器具の使用や出血をともなう民間医療などは避けるべきです。また輸血や性行為からでも感染するため注意が必要です。
エジプトはB型とC型の人口当たりの感染者割合が世界の上位になるなど、肝炎が多い国とされています。
●呼吸器系の病
エジプトの国土は9割以上が砂漠地帯であり、砂嵐がよく発生します。日本人はこの自然現象に馴れていないため、呼吸器系やアレルギーの疾患を発症する場合があります。
予防接種
上述したように日本に比べて医療水準が低いため、予防接種して渡航することが望ましいです。
外務省によると、A型肝炎・B型肝炎・破傷風の予防接種を行うことを推奨しています。
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