アメリカ軍の次世代グレネードランチャー開発計画というものがあったため、紹介しようと思います。
PGS プログラムとは
目的1 火力の向上
兵士が携行可能な高火力火器を開発する。この火器は放物線でない低伸弾道、半自動機構、ボックスマガジンを備えていなければならない。
この火器は複数の弾薬が用意され、開けた場所や遮蔽物の背後にいる目標、近接戦闘において効果的な威力を与えなければならない。
炸裂時は付随的被害を最小限に抑え、攻撃力と生存性を両立する。
これらの能力は旧来のグレネードランチャーおよびそれに類似した火器を持つ敵対目標に対して有利となる。
小隊規模の火力レベルが上昇することで、火力支援を他部隊に依存する状況が減少して時間的ロスを抑えられる。
目的2 射手の生存性向上
従来のグレネードランチャーはその弾道特性から射手が最大効果を得るため移動する危険性があった。
PGSはその必要性がなく、射手が防御効果の高い遮蔽物を引き続き利用しつつ発射することができる。
以上の目的を達成するシステムを開発するのが主な目的である。
システム要件
● 弾薬とシステムは、あらゆる温度条件で機能不全に陥ってはならない。また電磁パルス、サイバー攻撃、核、化学、生物兵器の使用下においても運用可能であること。
● システムは、35mから500mおよびそれ以上の距離で、敵兵士を倒す威力を発揮すること。
● 500m以内の目標に対し、構えてから引き金を引くまで5秒以内とすること。
● 500m先の目標に対し、発射から弾丸到達まで3秒以内であること。
● システム全体の全長は、34インチ以内に収めること。
● システム全体の重量は、14.5ポンド以内が望ましい。
● システムは視界が良好な場合500m、制限された場合でも300mの距離で高い精度で標的を確認・識別できること。
● 射撃統制装置が損傷もしくは機能不全になった場合でも、直接および光学的照準によって交戦能力を損なわないこと。
● システムは対遮蔽物用弾薬、訓練弾、近接戦闘弾を使用でき、さらなる拡張性のため対UAV用弾、装甲目標への徹甲弾の使用にも対応すること。
● 数百メートル先の交戦範囲を実現するため、可変倍率式の照準能力を持つこと。
● 測距、標定において最大800mの人員、1000m先の車両および小隊までの正確な距離を1秒以内に測定する機能を持つことが望ましい。
● 照準器視野内に、最大1000mの範囲で英数字表記および照準線を表記する機能を有すること。目標までの距離、気候、向きなどを計算して照準線を算出する機能は1秒以内が望ましい。
● システムはセミオートマチック形式で作動すること。
● システムは射手の利き手による機能低下を防ぐため、両利き用に対応すること。
● システムは好天時に600mまでの範囲で敵対目標と非敵対目標を識別し、同条件で最大1,000mの範囲で武装車両や分隊規模の武装兵士を正確に特定する角度分解能を持つこと。
選定までの流れ
本計画は銃器メーカーによる3段階の競争となっている。
第一段階 コンセプトモデルの提示
5社が選考に残り、選考された場合$15,000を獲得する。
第二段階 陸軍および国防省への詳細説明
3社が選考に残り、選考された場合$300,000を獲得する。
第三段階 最終デモンストレーション
最大18か月の試作期間が与えられ試作モデル製作、勝者は最大$2,000,000(2百万ドル)を獲得し、製造契約を結ぶ。
以上がPGSプログラムの要約である。
計画に応募したグレネートランチャー
ノースロップ・グラマン 25mm PGS

25mmグレネード弾を発射でき、アメリカ軍次世代統合型火器管制照準器XM157の搭載に最適化されている。
5発入りのボックスマガジンを採用。グレネード弾は空中炸裂弾を含む4種類の弾薬が用意されている。
重量を12ポンド弱(5.4kg)に抑え、低反動。
ノースロップ・グラマン社は2018年に中止されたXM-25を開発していたオービタルATKを買収したため、相当の設計ノウハウを持つと思われる。
社の広報動画では実際に発砲している様子から、コンセプトだけでなく発射可能な銃が試作されているようだ。
FNアメリカ MTL-30 PGS

FNアメリカの30mmグレネードシステム。社内では多目的戦術ランチャーとも。
3発および5発のボックスマガジンを装填。
全長35インチ、高さ8インチ、重量10ポンド強(4.5kg)と小型軽量。
最大500mまでの標的に対応。
相次ぐ次世代アメリカ陸軍の銃器の製造を手掛けることになるFN社の製品ということで兵站上有利か?
バレット/MARS 30mm PGS

バレット社とMARS社の共同チームが開発する 30mm 精密グレネードシステム。
バレット社は大口径銃器の開発ノウハウが大きい。また過去に25mm榴弾を発射するXM-109を開発している。
Plumb Precision Products M110 PGS

Plumb Precision社が開発するM110 精密グレネードシステム。
M110ライフルをベースにしたグレネードランチャーで、12ゲージショットガンの弾薬がベースの17.5mmグレネード弾を発射するのが特徴である。
SR-25に使用するタイプのマガジンを装填し、低圧と高圧のグレネード弾に対応。
弾種は対装甲弾、近接戦闘弾、訓練弾、対UAV弾など複数を用意。
遮蔽物に隠れる敵に使う高性能榴弾は、飛行時間に応じて爆発するモードまたは着発時に爆発するモードがプログラムされている。
可変倍率の光学照準器が装備され、標的情報は各数字とともにヘッドアップディスプレイに表示される。
ナイトテクニカルソリューションズ MIGS

コンセプトの段階はクリアしたがその後脱落した。上記イメージはMIGSに該当するかは不明。
アメリカ軍で使われている回転式弾倉のグレネードランチャーMGL-140をアンダーバレル式グレネードランチャーとして取り付け、高度な照準器が装備されている。
重心がかなり前にあるため非常に重く、扱いづらそうだ。
選定結果
バレット・MARS社チームのものと、FNアメリカ社のものが最終選考に進み、バレット・MARS社のものが選定された。

2026年8月のバレット社の広報に掲載されたPGSの画像。
5発のボックスマガジン、重量6.3kg、全長861mm。
試作モデルと比べバレット社の銃器の設計を取り入れ、より洗練された見た目をしている。
搭載された照準器はXM157のようだ。
弾薬は開発中のものを合わせると5種類である。
計画のメリット
● 銃口初速が現行のM203やM32よりも3倍速い300m/s以上速いため、遠距離の目標にも短時間で到達できる。
● 既存のグレネードランチャーよりも長い500メートル以上の距離でも交戦可能で、さらにプログラムされた弾頭により命中率が非常に高い。
● 現状命中率の高い炸裂弾を発射できる武器はないため、より遠距離からドローンを撃ち落とせる。
● ボックスマガジンを採用し、迅速な装填が可能である。
● 形状が小銃型であることや、弾道特性も小銃に近いため、小銃が基本の軍では訓練と習熟が容易である。また小銃付属品の互換性もとりやすい。
● 弾薬とFCSが非常に高度であり、運用データを蓄積することでさらなる次世代銃器の開発基礎となりえる。
● 0から作る訳ではなく、直近までXM25などの同種の銃の実地試験がなされているため、銃器メーカーの開発者は銃器のレイアウトや問題点がある程度分かっている事。
● 弾薬の爆発モード切替が可能。
計画のデメリット
● 弾が専用弾薬となるため既存の弾が流用できず、生産設備や弾そのものの費用が高額である。
● 同種の銃は各国で開発されてきたが、どの軍隊でも銃の強度の点で実用配備までは至っておらず、運用時には様々な問題点が発生すると考えられる。
● 歩兵やドローンには十分だが車両以上の目標には火力不足であり、40mm弾と比べても火力の点で中途半端な立ち位置である。
● 小銃よりもやや重いため運用時の用兵が変わる。また弾の種類が多いため現場に負担がかかる。
以上より、大部隊に大量支給される大口契約ではなく、少数の実戦運用状態で長期間のデータ収集と改良を続けることが予想される。
予想される改善点
● 無駄を省いたうえで強度を向上させつつ、銃のコストを可能な限り低下させる。
● 高価な銃が高価な弾しか撃てないことは大問題なので、安価な多用途の弾を早急に開発する。
過去のアメリカ軍試作グレネードランチャー
チャイナレイク グレネードランチャー

連発可能な大火力グレネードランチャーとして、チャイナレイク研究所が60年代に試作したもの。
ショットガンの給弾形式を採用し、銃身の下に弾倉があり、ポンプアクションで装填する。
サイズは大型だがアルミ合金製なので装填状態で4.6kgほどと軽かった。
60年代末に20丁程度が生産されそれ以降長く忘れられるが、2000年代に近代化改修を施す計画が持ち上がった。
アメリカ海兵隊は近代化改修モデルに関心を示したが、開発会社が権利問題でトラブルを起こしたため、既に陸軍で採用されていたダネル社のMGL-140を採用した。
大規模に採用されなかった理由は不明だが、大型でかさばること、運用する場合グレネード弾が大量に要ること、アルミ合金の強度不足、ジャムの頻度などが考えられる。
EX-41

歩兵部隊が携行可能な長距離支援グレネードランチャーとして、1990年代にルイビル海軍兵器廠で開発されたもの。
一丁のみが試作され、上部に照準器の付いた大型のショットガンのような見た目をしていた。
軍から要求された射程距離は3,000mで、達成するにはMK19に使われる40×53mmグレネード弾より更に強力な専用グレネード弾を使用しなければならなかった。
当然そんな弾は無いため、射程距離は1,500mに妥協せざるを得なかった。
M79に使用される低圧グレネード弾も使用可能という特性は、軍の要求を下回った後どうにかして弾の運用バリエーションを増やそうと開発に苦慮した後付けと思われる。
40×53mm弾は一般的に三脚を使ったり車両に固定して使用するので、EX-41は兵士の肩に猛烈な反動が襲い掛かることは想像に難くない。
重量は10kgあり、弾と照準器のフル装備ではさらに重くなったと思われるので、携行性を失った本銃は存在意義も失い、現在はナイツアーマメント社に保管されている。
XM-25

XM-29 OICW計画の一環として、グレネード発射システムを銃単体として開発しようとしたグレネードランチャー。
レーザー測距儀付の照準器を標準装備し、距離に応じて爆発タイミングを調整可能な高性能エアバースト弾を使用。
従来の直撃炸裂のものよりも、隠れた敵に効果的に機能する攻撃力が利点だった。
数種類の弾薬のバリエーションが考案され、あらゆる敵を想定した。
アフガニスタンで実地試験が行われ、使用した部隊の評価は上々だったという。
しかしある時に給弾不良を起こし、射手が軽傷を負う事故が発生する。これを切っ掛けに評価が落ち、最終的に2018年に計画中止になった。
これ以外にも銃には問題点がある。
未装填状態で6.4kgという重量と、作戦時兵士は36発の弾丸を合わせた17kgのシステム重量が重すぎること。
重いが36発の弾丸は戦闘ですぐ消費してしまう継戦能力の無さ。
バッテリーの寿命で銃が使えなくなるという、従来銃器にはない新たな欠点も問題だった。
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