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マサチューセッツ州に拠点を置く3Dプリンター製造会社のデスクトップ・メタル(Desktop Metal)が、高度な板金成型加工が可能なデジタルシートフォーミングマシン Figur G15 の商業出荷を開始したと発表しました。
Figur G15の性能
Figur G15 は最大で1,600×1,200mmのシートを成形することが可能で、スチールプレートで2.0mm、アルミニウムプレートなら2.5mmまでの厚みに対応し、最大2,000ポンドの力でシートを成形します。
従来のプレスマシンアーキテクチャからの脱却を目指す Figur G15 は、カスタムメイドの製作ツール、金型、専用のプレスマシンを使用することなく、Z方向に最大で400mmの絞り深さの部品製作が可能です。
専用設計のビルドボックスにより、成形材料にかかる力の分布が軽減されています。このビルドボックスにより、シートメタルのデジタル成形における最も困難な課題のひとつである成型時の変形を克服し、高い精度での加工を実現しています。
成形される部品は、マシンによって成型時に表面仕上げが施されるため、後仕上げの不要化および最小限化に貢献しています。
Figur G15の戦略
板金成型加工業は無くてはならない業界ですが、新たなものを成形するには金型を新たに造らねばならず、時間と費用がかかります。
また生産量が少ない場合にも金型が必要なため、生産量の利益変動が大きいです。
しかし、デジタル板金成型マシンである Figur G15 であれば、導入したメーカーは上述の高い初期費用や長い待ち時間を発生させることなく、独自の金属製品を顧客に迅速に供給できます。
圧倒的な生産速度によって初期投資を素早く回収することができるとしています。
Figur G15のカスタマー
Saltworks Fab
デスクトップ・メタル社は、フロリダ州の自動車修復およびカスタムカー事業者の Saltworks Fab にこのマシンを販売しました。
Saltworks Fab では多くのビンテージカーを取り扱いますが、それらのボディパネルは現在では金型を含めて市販されていないため、非常に手間とコストがかかる製造プロセスを踏む必要がありました。
Saltworks Fabはデジタル環境の利点である作業の高速化の恩恵により、複雑で一回限りの設計・製造を含めて短期間での納品が可能になったとし、短期間生産と新規顧客に提供できるサービスが増加したと述べています。
さらに同社はラスベガスの展示会において、Figur G15によりアルミニウムパネルで成形されたメルセデスのガルウイングのボディ側面を披露しています。
Rob Ida
ニュージャージーのカスタムクラシックカー業界の有名人である Rob Ida氏は、設計図で終わった1950年代の幻のタッカー・タリオカを実現しようとしており、部品の製造に Figur G15 を使用して製造していると述べています。
デスクトップ・メタルの今後
2023年現在、3Dプリンター業界は株価が下落しており、デスクトップ・メタル社もその例外ではありません。
デスクトップ・メタルの株価は12月に非常に低水準で推移しており、一説では上場廃止も噂されています。
新たなデジタル板金成型マシンを出荷することで株価が改善する見通しもありますが、先行き不明です。
また高い技術力で知られるマキナ・ラボ(Machina Labs)がデジタル板金成型業界で活動を活発化させていることもあり、競合することが予想されます。
現在デジタル板金成型業界は成長途上であり、デスクトップ・メタルやマキナ・ラボなどの数社を除けば大学や研究機関などの学術界でしか存在しない状況です。
どちらの形式が主流になるのか、それともより後から登場する形式になっていくのかは定かではありません。
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