NASAが軽量な新型ロケットノズル「 RAMFIRE 」を開発

RAMFIRE Nozzle Hot Fire Test
©2023 NASA’s Marshall Space Flight Center

NASAは新しいアルミニウム合金で製造された新型ロケットノズル「 RAMFIRE 」の燃焼試験に成功したと発表しました。

深宇宙探索や今後の宇宙開発で使用する部材は可能な限り軽量化を施して、より多くの物資を積載する必要があるため、軽量なアルミニウム合金の適用範囲を従来よりも広げて使用するためのプロジェクトが RAMFIRE プロジェクトです。

アルミニウム合金は軽量であるものの、高温耐性が低いうえに溶接性が悪いために溶接時に亀裂が生じ、従来ノズルのような高温で使用される部品に使用されることはありませんでした。

ですが、今回コロラド州の製造企業 Elementum 3D と連携し、新開発のアルミ合金とレーザー指向性エネルギー堆積と呼ばれる工作法、特殊粉末を併用することにより、エンジンノズルを一体部品として製造することに成功した模様です。

レーザー粉末指向性エネルギー堆積(LP-DED)は、レーザーを使用して溶融プールを生成し、そこに特殊粉末を吹き込むことで材料を層ごとに積層して成形する方法です。

従来の部品の組み合わせによる構成では部品数が1,000点に上ることもあり、一体部品構成としたことで、溶接時間や組み立て時間が削減されたことで製造時間が大幅に短縮しています。

製造されたロケットノズルは、アラバマ州のマーシャル宇宙飛行センターで液体酸素と液体メタンを燃料とする燃焼試験にかけられ、数十回の始動と合計10分間におよぶ燃焼状態を維持することに成功しました。

この試験ではノズルが華氏6,000°(摂氏3,300°)の高温ガスにさらされましたが、ノズルの冷却用の内部機構と高温時にノズル周囲に氷柱を形成する仕組みにより、ノズルが溶解することはありませんでした。

ノズルのチャンバー圧力は目標値を上回る 825ポンド/平方インチ(psi)を超える成績を残し、宇宙空間で想定されている最も過酷な使用条件に耐えられることを証明することがでました。

RAMFIRE プロジェクトでノズルの燃焼試験に成功しましたが、すでに次の段階として、同じ材料と製造方法による複雑な形状の一体型冷却剤チャネルを備えた直径36インチのエアロスパイクノズルと、極低温流体用途向けの真空ジャケット付きタンクが製造されて試験評価が行われています。

NASAの主任研究員は「今回の試験成功は、エンジンノズル技術開発において一つの節目である。月、火星、そしてより遠い世界を探求するための土台になる。」と述べています。

NASAは学会や研究機関ならびに宇宙開発産業界に今回得られた試験データや製造プロセスを共有し、ロケットノズルだけでなく、今後の人工衛星や宇宙産業用部品のコンポーネントを含んだ大規模な範囲において成果を適用する方法を模索しています。

テクワンは皆様の応援により支えられています。

サイトをサポート

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

ドローンや車両などのテクノロジーに関連する記事を上げています。