新世代飛行船パスファインダー1の試験飛行が進行中

The Spectacular Future of the Airship | Hello World with Ashlee Vance
©2023 Bloomberg Originals

アメリカの飛行船製造会社 LTA Research 社が開発中の大型飛行船 パスファインダー1号が、FAA(アメリカ連邦航空局)から試験飛行の許可証を所得しました。

LTA Research 社は Googleの創設者のひとりであるセルゲイ・ブリン氏が設立した会社です。

ジェット機やヘリコプターなど莫大な燃料を消費し続けなければ飛ぶことができない時代になった今、もう一度飛行船の可能性を深堀りすることで、時代に合わせた空の運用を見出し、人員や物資を運送する新たな選択肢を提供すことを目的にしています。

新時代の素材でつくられる飛行船は過去のものよりも軽く、浮遊ガスに歴史的事故を起こした水素ガスではなく、ヘリウムガスを使用して浮揚するため安全です。基本的に大型であるほど搭載力が増加する飛行船のメリットにも注目するべきものがあります。

LTA Research は2015年に本格的に始動し、最初は小さな模型の飛行船の製作からスタートしました。その後徐々に規模を拡大し、実寸の飛行船の設計と製作を進めて2022年にようやく工場内で最初の浮遊試験が行われています。

LTA Research は、各国の飛行船製造会社と提携し、製造に関して先進性を欠くことがありませんでした。

飛行船を係留するノーズコーンは大きな負荷がかかるため、各種軽合金と炭素繊維などの最新素材を使って軽量かつ頑丈に製造されています。これにより、最大70ノットの風に対しても係留を保つ能力があります。

モーターが内蔵されたプロペラユニットは船体の側面と尾部に取り付けられ、+180°から-180°の任意の角度に可動できるため、あらゆる方向に制御することができます。操縦はジョイスティックとセンサーフィードバックを組み合わせたフライバイワイヤシステムにより、プロペラユニットとフィンを動かして操縦します。

飛行船は13個のメインフレームで構成され、それぞれが3,000個の溶接されたチタンハブと10,000個の繊維強化カーボンチューブで組み上げられています。

負荷が集中するゴンドラ、フィン、着陸装置、テールモーター接続部などの重要箇所には強度に優れる構造のジョイントが組み込まれています。応力だけでなくさまざまな環境負荷に耐えるため、外皮のコーティングにはポリフッ化ビニルラミネートの tedlar  が採用されています。

ヘリウムガスを内蔵した気嚢は13個内蔵されており、高度に応じて充填レベルが変更される仕組みです。ガスに関してはヘリウムガスを監視する光センサーの搭載により、ヘリウムの量を計算し、バランス制御や飛行船の安全な操作につなげられるシステムが構築されています。

降着機構として、ダンパーとタイヤが組み込まれた頑丈な着陸装置が採用されています。この機構は、ツェッペリン社との提携によってもたらされています。

このように、21世紀の技術を惜しみなく投入したパスファインダー1号は、飛行が可能な空港において一連の試験を行う予定になっています。

今回認可されたFAAの許可証では上昇は1500フィートまでの高度制限がつけられている状態となります。

パスファインダー1号は、屋外での地上試験のため移動式の係留マストに取り付けられ、各種の地上試験が行われます。そのあと数十回の低空飛行を合わせた計50時間の飛行試験が行われる予定になっています。

パスファインダー1の開発のノウハウを取り入れた、全長が600フィート(183m)に達するより大型のパスファインダー2の建造計画もスタートしています。

もう一度天空の巨人が空に舞い上がる日は近いのかもしれません。

テクワンは皆様の応援により支えられています。

サイトをサポート

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

ドローンや車両などのテクノロジーに関連する記事を上げています。